家に帰ってから、料理を作っている間に蛍くんにはお風呂に入ってもらうことにした。
ひき肉とジャガイモが安かったためハンバーグとポテトサラダを作ることにした。

明日のお弁当も私が作らなきゃいけないんだと思うと早く寝たくてたまらない。
私のには冷凍食品つかっても別にいいけど、蛍くんのにはあんまり使いたくないから、晩御飯を作ってる間に少しだけでも下ごしらえを済ませてしまおうと思い同時進行で進めることにした。

「いい匂い」

もう少しでご飯が炊き上がりあとはテーブルに並べるだけになったところで上から声が降ってきた。
蛍くんは私と30cm以上身長差があるから本当に上から声が降ってくるような感覚がする。

「あ、もうちょっとでできるから待っててね」

ちょうど今、ご飯が炊き上がった音がした。
ご飯をつぎ、テーブルへ並べるけれど蛍くんは"多っ…"と少し顔を歪めてしまった。
全国の男子高校生が平均的にどれくらい食べるのかわからないけれど、ここに並んでいるものは多くはないはずだ。

「蛍くんって小食なの?」

「まぁ…」

「運動部なのに食べないからそんなに細いんだよ?食べなきゃ倒れるんだからちゃんと食べてね」

蛍くんが身長の割にあんなに薄っぺらい理由がわかった気がする。
私のお腹の肉を蛍くんにあげたいくらいだ。

「なまえさんもちゃんと食べてくださいネ。細いんですから」

「蛍くんには言われたくないで〜す!むしろ私は太いくらいです〜だ!嫌味かこのやろ」

「あ、わかっちゃいました?」

こんのクソがき…!いや、一個しか違わないけど!
この子は挑発するのが趣味なのか?履歴書の趣味特技欄に挑発って書くのか?高校の志願書にもそうやって書いたのか?ん?

「とりあえず早く食べてくださ〜い。とっとと片付けて寝たいんです〜」

幸い、明日までの課題はないため、片付けを終えたらすぐに寝れるようにしたいのだ。
下ごしらえは先ほど無事に終わっている。

「朝練って何時くらいに家出るの?」

「7時前に出れば余裕で間に合います」

「わかった。間に合うようにお弁当作るからね」

「え?」

「え?」

いや、え?って言われてもお弁当なきゃ明日のお昼ご飯ないじゃん。
蛍くんが購買に買いに行くとか思えないし、こんだけ細けりゃ吹っ飛ばされそう。バスケ部とかに。

「迷惑とかじゃないからね?私がしたくてしてるわけだし!ほら、早く食べて課題して寝なさい!成長期!」

「ハイ」

蛍くんとのこの見えない壁を壊せる日は来るのだろうか。
家でしか会話ができないけれど大丈夫だろうか。
心配です。