「なまえ?」
「こんな風景見るのは最後だし、制服も最後だしって考えるとすごく切なくて…。みんなで集まれるなんてこれから先、なかなかないと思うからさ」
しんみりした空気にしてしまったけれどこれが私の本音だ。
3年間いろんなことがあった。きっと一生忘れられない思い出になる。
「なまえちゃ〜ん!」
「卒業ってことはそーいうことなんだよな…そっか」
「今更デショ。このメンバーなら数ヶ月後とかに集まってそうじゃん。だからなまえ。泣かないの」
「月島が珍しく優しい…!」
蛍にしてはものすごく優しい言葉をかけてきて、バレー部一同驚いている。
「そうだよね!うん、笑って"またね"って言いたいね」
「そうね。これで終わりじゃないものね」
「だな!」
「じゃ、みんなで坂ノ下行って、肉まん食うか!」
「久々大地の奢りな!よしじゃあ片付けるぞ〜!」
「「「ウッス!」」」
▽▲▽「月島はなぜかなまえには優しいよな」
「そう?まあ、森然での合宿以来少しだけ優しくなったといえばなったかな」
あの時の蛍と忠の喧嘩もどきをたまたま見かけてハラハラしたのは言うまでもない。
けれど、忠に言われたことで、そして、黒尾さんたちの働きかけできっと蛍は変わったのだろう。
坂ノ下商店に着くと、私たち高校生組は一斉に卒アルを取り出し、メッセージを書き込んでいく。
昨日すでに友人からメッセージを書き込まれていたりして隙間なんてないに等しかったけれど、皆んなでワイワイ楽しく書き込みをする。
お兄ちゃん達も懐かしそうに高校時代の思い出話をしていた。
「翔ちゃん字が汚い!」
「影山だってきたねーもん!」
「就職した時とか、書類書くときしんどいよって何度言ったら……」
「キミたち、こんな日まで煩いとかもう一回高校生してきたら?」
「ふんっ!卒業証書貰ったからもう無理だもんね〜だ!ツッキーのばーか!」
「ツッキーって呼ばないでって言ったデショ」
「ごめん!ツッキー!」
「山口の真似しないで」
「ごめん!ツッキー!」
「なまえ?怒るよ?」
「こらこらお前ら」
蛍とのやりとりにお兄ちゃんが見かねて仲裁に入る。
お兄ちゃんは知らないだろうが、まだかわいいほうだよこれ。なんて口が裂けても言わない。また煩いこと言われそう。
「そーいや、なまえと月島は何ヶ月なの?」
潔子お姉さまが笑顔で私の隣に来て聞いてくれる。
はぁ…!なんとお美しい…。
「んーと、今月で半年ですね。」
「なまえ、」
蛍に名前を呼ばれてハッとする。
潔子お姉さまの他にも先輩達がいたんだった。
同級生組と潔子お姉さまには私と蛍が付き合っているということは言っていたけれど、お兄ちゃんを含め先輩達には言っていない。
潔子お姉さま、謀ったな……!
チラッと潔子お姉さまに視線を向けると、やっちゃんにキルブロックの説明をしていた時のニヤリとした顔をしている。お美しくて咎められないじゃないか!
ツーっと冷や汗が背中を伝っていく。
や ら か し た