無事にチャイムが鳴る前に教室へと滑り込む。
今年は飛雄とも翔ちゃんとも同じクラスにはならなかった。進学クラスの3人とは同じクラスになれるわけなくて。

3年になって仲良くなった、現在席が前後の松原 莉央と挨拶を交わす。
莉央は陸上部に所属していたからか、バレー部の話などたくさん運動関係に関して沢山話を聞いてくれたし、聞かせてくれた。

「今日で終わりだね〜、なまえはさっきまで第二体育館にいたんでしょ?」

「まあね!バレー部3年で集まれるのは今日が最後かもしれないからさ。放課後にも集まって卒アルにメッセージ書きっこするんだ〜」

鞄の中には昨日配られたばかりの卒業アルバムが入っている。
体育祭やクラスマッチ、文化祭など3年間の思い出が沢山詰まっている。

そして私たちは3年前に入学式をした体育館へと移動を開始した。
入学式の時みたいに飛雄の姿を見つけたりして、本当に卒業式がこれから行われるのか不思議にもなった。
体育館へと入ると、安定のカツラ教頭。

入学式の時は桜が乗った風があのカツラで遊んでいったけれど、残念ながら宮城の桜はまだ咲いていない。
そこだけは卒業式らしくて少ししんみり。あのカツラをもう見なくなるなんて少しだけ寂しい。

卒業証書をうけとり、教室へと戻る。
あ、この教室も今日で最後か。
何もかもが最後なんだ。そう思うと少しだけ目頭があつくなった。

▽▲▽

クラスの人たちや桜に最後の挨拶をして、クラス写真を撮ったりした後、やっちゃんと合流し急いで第二体育館へとダッシュする。

そーいや、翔ちゃんを追いかけて第二体育館へと向かっていた時に初めて蛍と忠と会ったんだっけ。

ドンッと何かにぶつかった音がして前を見ると、蛍がいた。
え?デジャヴ?すごいね。今日1日で今まであったことが沢山起こっている。

「なまえか…。そーいやキミさ初めて会った時もぶつかってきたよね。今回は谷地さん付きだけど。」

「あ、覚えてる?あの時忠に"ツッキー"って呼ばれてたから私の中で蛍はツッキーになったんだよ」

「なにそれ…」

「ツッキー!体育館いこ!あ、なまえちゃんも!谷地さんも!」

ほら、やっぱり蛍がいるところには忠あり。
蛍や忠の過去を聞いた時にはすごく胸が傷んだけれど、今2人が楽しそうに笑えるならそれでいいと思う。
2人と一緒に第二体育館へと向かう。
2人に挟まれると、本当に囚われた宇宙人になった気分になる。
2人じゃなくても、バレー部の人間に挟まれるともれなく囚われた宇宙人になれる。

ガラガラガラと相変わらず重い扉を、初めて開けた時より簡単に開けてしまって自分の無駄な成長を感じる。
しかし、ここはロウソク塗っても油さしても滑りが良くならなくてやっちゃんや潔子お姉さまが開けにくそうだった。
あ、お分かりかと思うが未だに潔子お姉さま呼びが抜けなかったりします。

「もうきてるね〜」

扉を開けるとそこには懐かしい顔が揃っていた。