優雅に過ごしましょ | ナノ


夏休みの過ごし方って個々にある。海に行ったり、キャンプしたり、花火見に行ったり。だけどわたしの彼氏はそんなことに全くと言っていいほど興味がないみたいで、この真昼間に冷房をがんがん効かせて優雅にソファに座って読書をしている。まあわたしは、彼がそれでいいならいいし、海やキャンプに行ったところで人ごみに紛れたりするのもめんどうだ。つまりわたし達は根っからのインドア派なのだよ。なんてね。この部屋は冷房が効いてて涼しいし、麦茶も飲みたい放題だから本当に極楽だ。唯一の不満といえば、彼が読書ばかりをしていて退屈だということだけかな。

「真ちゃん、ひま〜」

暇でしょうがないわたしを余所に、黙々と読書を続ける彼。彼が読む本はなにやら難しい本ばかりで、ただいま3冊目に突入しました。わたしはというと、彼に負けじと日本文学なんぞの本を読んでみたけど、一時間で惨敗してしまいました。それでつまらなくなってしまったわたしは、彼にかまってもらおうと後ろから首に巻きついた。だけど彼はわたしのことなんて気にもせず、読書に夢中だ。わたしより読書に夢中だなんて、嫉妬しちゃうなあ〜。あまりにも退屈になってしまったので、彼にいたずらを仕掛けた。彼のかけている眼鏡のブリッジを上げては下げ、上げては下げを繰り返した。眼鏡を外した真ちゃんは、本当に視界がぼやけるらしいから、きっと今頃文字が読めなくて苦労しているだろう、ぷぷ。と彼の後ろで楽しんでいると、彼は急に振り返ってわたしの顔をじっと見た。あれ、思ったよりも嫌そうな顔してない。その直後、わたしの視界は一転して天井でいっぱいになった。彼がわたしの腕を引っ張って、無理やり自分の懐に抱き寄せたのだ。あっという間だった。そして、気づけば彼の膝の上。まさにお姫さまだっこの状態で、彼は再び読書を続行させたのだ。えっ、なになに、いったいどうしたの真ちゃん。なんて、わたしの脳内は動揺でいっぱいになった。だって絶対怒られると思ってたから、そのつもりでからかっていたから、まさかこんな反撃をしてくるとは思わなかった。そんなわたしの動揺を察知してか、彼は「こうでもしていないと、読書に集中できないのだよ」だってさ。もう、わたしの扱いうますぎでしょ。わたしはご褒美をもらえた犬みたいに、しっぽでも振っているかのように、彼にだきついた。彼は動じることなく、読書を続けていた。なんて優雅な夏休みなのでしょう。

2012/08/15