つつまれるくらいに | ナノ


火神くんのベッドは、ふつうに比べてやっぱり大きいけど、あたしと一緒に寝てたら結構ぎゅうぎゅうだ。あたしが落ちないように、あたしが壁際で寝てその隣に火神くんがいる形になってる。落ちないようにって、火神くんが直接言ったわけじゃないけど、そんな気がした。不器用だけど優しい火神くんが愛しくて、だいすき。

朝起きると、火神くんはあたしに背を向けた状態で眠っていた。おおきくて、広い背中。あたしは火神くんより背が低すぎるから、こんなにまじまじと見たことはなかったけど、本当におおきな背中だ。このおおきな体でバスケをやっている彼を思い出すと、すごく見惚れてしまう。あたしはそのおおきな背中を抱きしめて、すり寄った。あ。火神くんのにおいがする。普段こんなことできないから、うれしくなった。

「……ん…なんだ、起きてたのかよ」

火神くんの声が頭の上から聞こえてきた。あたしが抱きついていたのにびっくりしたのか、どうした?って聞かれた

「火神くんの背中おおきいなって思ってだきついた」
「…そ、っか…」
「あたしがもっと背が高かったら背中に抱きつけるのになーって思った」
「……お前がでかくなるのはなんか嫌だな」
「そうー?もうちょっと身長ほしいんだけどなあ」
「お前はそれくらいでちょうどいい」

すると、火神くんは体勢を変えて、あたしと向き合う形になった。火神くんの顔が間近にあって、心臓がとびはねた。あ、やっぱりこっちのがいい。背中にだきつくのもよかったけど、正面のほうが好きかも。

「お前がおっきくなったら、俺の体んなかに収まんねえだろ」

そう言われて顔に熱が集中した。あたしはすっぽりと火神くんに抱きしめられて、心臓の音がきこえちゃうんじゃないか、と思うくらいに距離が縮まった。ああ、やっぱりおおきい彼が好きだ。

2012/06/27