事後報告





バカああああああああああッ!!!


と、ものすごい音が辺りに響き渡ってこだましていた。同時に近くにいた鳥は飛び立ち、虫も何もかもとっさに逃げていき、その音が消える瞬間に辺りは沈黙した。

その発信元にいたミスは少しキツそうに耳を押さえていた。



「…ッちょ。うるさ…っ」

「〜〜〜っ」



頭にギンギン来るなか、ミスが視界にとらえたのは桜花の赤面した姿だった。若干涙目なような気がする。

えっ………涙目?



「…あ、の。桜花?」

「バカ!バカバカ!見ないでよ!」



なんだこの言われようは。なぜ自分が責められているのかミスは理解できなかった。というか自分は寝ていた筈だ。だのにしまいには泣くだなんて。参った。……泣かれると、どうしていいか分からなくなる。

自分がなぜ責められているのか、直前の出来事を思い出してみる。



出来事と言えどもやはり寝ていただけだ。気付いたら目の前に桜花がアップでうつっていた。そして起きてそうそう真っ赤になりいきなり怒鳴り始めた。それだけだ。

全く意味が分からない。

寝起きでしかも自分は無駄に聴覚がいいから、近くで怒鳴られればやはりダメージは大きい。今でも頭が痛い。
こっちが責めたいくらいだ。



「桜花…僕、何かしたの」

「………でっ」

「え?」

「なんであんたが隣で寝てんの!!!?」



しばらくキョトンとしていた。そしてようやく周りの状況を見始めた。確かに…ここは建物の中であって。ああ…なるほど。

少し自分で推理してみる。


宿屋で桜花就寝
  ↓
ミス侵入
  ↓
桜花の隣で就寝
  ↓
桜花起きる
  ↓
 現在


ざっとこんな感じだろうか。推理した所でようやく寝る前の記憶が返ってきた。といっても、僕は侵入した覚えはない。



「桜花が連れて来たんでしょう」

「はあ!!!?私が!?」



様子を伺う限り、桜花は全く覚えがないようだった。そして少し考えると、元々赤かったのがさらに爆発するように赤くなった。



「そ、そっか…私…酔っ払って…!ねえ、何かした!?私何かしたの!!!?」


赤くなったと思ったら次はものすごい剣幕で詰め寄ってくる。何もなかった。その意思表示をしようと思ったけど、ある記憶が脳裏によぎった。


確かに、何かしてた。



「ねえ!?何かしたの!?なんとか言ってよ〜」



ミスがなかなか答えない事から焦りを覚えたのか、またまた涙目になりながら詰め寄っていた。しばらく黙って桜花を見ていたミスはため息をつき、ようやく答えを出した。



「っ!」



桜花は突然黙り、目を丸くした。なぜなら、なぜなら………。



「これキスって言うんだっけ?」

「えっ。え……!?」

「アルコールの味がした。臭いもすごかった」

「……………っ!!!?ま、まさか……」



桜花が動揺を隠せずにいると、ミスは軽く微笑んだ。



「僕も初めてなんだ。これ」



僕は昨夜、酔っ払いに襲われました。そう言いながら舌を出すと、いよいよ桜花は羞恥心に耐えられなくなり、ぱたんと倒れた。










2人きりで寝てまでベロちゅーだけだというのもまたうぶな話だ。


実はあのミス桜イラストの妄想です。130302


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