おはよう



彼は基本、真夜中に目が覚める。彼曰わく、生まれつきこうだった訳ではないけど、気がついたら夜行性と言われていたらしい。

だからと言って自分も夜行性になる訳にはいかない。たまには話したい、と思って彼が目覚めるまで待っててもいつの間にか寝てしまい、気がついたらご丁寧に寝かされ朝を迎えていた…なんてしょっちゅう。話すことはめったになかった。
ひとつ屋根の下で住んでいるにも関わらず、だ。


そして今日。
起きるまで待つ作戦は止め、ムリヤリにでも彼を起こす事にした。決行時間は様々だが、次第に時間を早めていく予定。これを毎日続けていけばきっと夜行性から脱してくれるのではないか、という期待を持つ。

しかし彼の睡眠に対する欲はハンパないものだ。そう簡単に起きはしないと思うが……。

時間は11時。彼が起きる時間は分からないが恐らく日付を越えた頃の筈。普段なら床につく時間だが今夜は彼の部屋へと侵入。

そして、いびきひとつたてない彼の寝姿を覗き見る。この姿を見る度、寝息を聞く度に私は癒やされ、心奪われてしまう。



「綺麗だなあ…」



ふと、呟いてしまう。自分らしくない言葉に何言ってるんだ私、と一瞬焦るが、本当に綺麗だった。
人ってこんなに綺麗に寝れるものなのか。


愛しい。


愛しき彼を見つめる内に眠気が襲い、うとうとしていた。だが突然その眠気は醒めた。ターコイズと、目があっていたからだ。



「え?」



自分でも情けないと思うくらいの間抜けな声を出していた。驚愕と嬉しさと感動が入り混じった…本当に間抜けな声。

ターコイズ色の、彼の瞳と目が合っている。綺麗だと感じるのは、ここ数ヶ月の間一度も目を合わせる事がなかったからだろうか…。



「……おはよう」

「おはよう、ミス」











“おはよう”に時間的な縛りはない。
実は続きがあるんですが今回はキリのいいところで切り上げておきます。また今度。130330


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