▽黒子/花宮

心臓の横の、胸の真ん中よりちょっと下辺りが、じくじく、じくじく、痛かった。

「すきだよ、」

いつもいつも、思ってもないのにそんな浅い台詞をわたしに語りかけて。

「バァカ。大事にする、っつったろ」

大事にもしてくれないのに、そう言ってわたしを優しく抱きしめる。
わたしがあなたを本気で好きだってことを承知の上で、期待を持たせるようなことをする。

「……真…」
「?…なんだよ」

本当はね、全部全部知ってるんだよ。
人の不幸はミツの味だって言ってるあなたのことだから、わたしを付け上がらせて裏切って、傷付けようとしていることも。

だけど、いいの。

「……真、好きだよ」
「!」
「…大好き」

たとえそれが、蜘蛛の巣に囚われてジワジワとなぶり殺されてしまうような運命だとしても、真になら傷付けられてもいい。そう、思えるから。
思ってしまったから。

「…なんだよ、今さら」
「んー…なんか急に言いたくなっちゃって」
「バァカ。んなことわかってるっつーの」
「へへっ」


なのに、ねえ。
…どうしてあなたがそんな顔するの。

「……真?」
「……んだよ」
「―…」

わたしのことなんて好きじゃないんでしょう。
わたしのことなんてどうでもいいんでしょう。
ただ、あなたが幸福を得る為にわたしを利用しているだけなんでしょう。

だからそんな、泣きそうな顔しないで。

「…………………お前なんか、好き、じゃねえよ、バァカ」

だからそんなこと、小さい声でも言わないで。




ウソかホントウか、分からなくなるから
(わたしは好きよ)(…たぶん、だけれど)


好きになってしまったのは、どちらだったか


20130926


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