▽海賊/ロー
「…ロー」
気づかれないように、本当に、本当に小さい声で名前を呼んでみたの。
ありえないけれど、もしもこれで振り向いてくれたら、きっとわたしはあなたを世界で1番好きになる。
だけどやっぱり、当たり前だけどローは振り向いてはくれなくて。
わたしはか細いため息をつくと、下を向こうとした。
けれど、
「なんだよ?」
「…へ、?」
「あ?さっきおれの名前呼ばなかったか?」
「っ、」
「………気のせいか?」
ああ、なんてことだろう。
わたしは首を傾げて、「確かに名前を呼ばれた気がしたんだけどなア」とぼやいているローを前にして、確かに世界一の恋に落ちる音を聞いたんだ。
少しだけ素直になってみようか。
20120912