▽排球/音駒(山本猛虎)

それは、音駒男子バレー部で執り行われた会話である。

「そろそろ俺らもマネージャー、欲しいっスね」

その手の話題はいつものごとく、山本猛虎から始まる。

「まーた言ってるよ山本の奴」
「・・よく飽きないよね」

それにいつものごとく返す夜久衛輔と孤爪研磨。
もう何回目だろうかと、ため息を吐きまくりそうになる。
猛虎はいつもそうだった。
烏野と練習試合をしてからは特に。

「まあ確かに、女の子いた方がやる気出るっスよね!」
「おお!分かるかリエーフ!」
「オレも肯定派なんで」
「俺もっスよー!」
「おお!犬岡!」

類は友を呼ぶ。
旗から見れば今山本に集まっている灰和リエーフと犬岡はまさにそれだろう。
夜久はため息を。
研磨は無関心を決め込むことにした。
が。

「クロさんも!マネージャー欲しくないっスか?」

とんだ飛び火だった。
いや確かに、マネージャーを希望するのであれば主将である黒尾鉄朗に確認は取らなければダメなのだろうが。

「は?オレ?まあオレはどっちでもいいぜー。山本がうるさくなけりゃ」

ごもっともな意見だった。
つまり、これは猛虎が食い下がるしかないのだろう。

「ま、欲しかったらお前が頑張れってことだ」
「え?クロさん?」
「頑張れ。虎」
「あれ?研磨?」
「センパイならなんとかなるっス」
「おい?リエーフ?お前は手伝え?」
「え」

見放された猛虎に見放した全員。
ということは、みんな正直どちらでもいいのだろう。
いれば便利なのだろうけれど、頼める女子もいないし、猛虎が諦めるのを待つまで。
そこまでみんなが思い至った所で夜久は思った。

「つーかさ。マネージャー欲しいんならほら。山本の・・なんだっけ?いるじゃん。女の子」
「はい?」

なかなか出てこないフレーズがもどかしい。

「ほらあの子だよ!よくお前のモヒカンもふもふしてる奴」
「・・ああ」

もふもふって。
研磨はそう思いながらもとりあえず会話の流れに身を任せた。

「幼なじみのことっスか?」
「そうそう幼なじみちゃん!」
「誰だ?」

すかさず食いついたのは黒尾だった。
それも仕方ない。
女の子なんて周りにいなさそうな猛虎に初めて出てきた女の子の話題。
全員が頭に「?」を浮かべる。

「いやいやいや。アレだけはないっスわ」
「なんで?」
「あいつちっちぇー時から一緒にいるんスけど、もうなんつーかガサツっつーか女じゃねーつーか」
「そうか?結構可愛かったと思うけど」
「!?夜久さん目大丈夫っスか!?」

その言葉にムッとした夜久。
しかしもっとビックリしたのはその他だった。

「よし、山本。その、あー・・幼なじみちゃん?」
「え?はい」
「口説き落としてこい」
「は!?」
「そうそう。幼なじみなんだったらやってくれるだろ」
「いやいや夜久さん!無理ですって!」
「おもしろくていいんじゃない?」
「あ!研磨も協力してくれんならやります!」
「え」
「おーいいぞー。じゃあ頼んだ」
「ちょ、クロ・・」

山本ととばっちりをくらった研磨の抵抗も虚しく、かくして二人は山本の幼なじみを口説き落とすこととなった。

****


「え?マネージャー?」
「・・はい」
「ふーん。虎がわたしに、お願い?」
「け、研磨もいる!」
「研磨くんも?」
「・・・不可抗力だけど」
「あんた脅したんじゃないでしょーね?」
「はあ?!してねーよ!人聞き悪いこと言うな!」
「ほんとに?研磨くん」
「俺の言葉もちょっとは信じて!」
「・・まあ、少なくとも虎は脅してないよ」
「・・ま、いいや。いいよ」
「・・・は?」
「え?」
「い、いま・・」
「やるって言った。何?不満?」
「い、いやいやいや!アザーッス」
「そのかわり虎のモヒカンもふもふする時間増やすこと」
「え」
「それからわたしの気が済むまで1日3回言う事聞くこと。いい?」
「な!」
「不服申立ては一切受け付けませーん。じゃあこの話終了。研磨くん、わたしは明日から参加ってことでいい?」
「ちょ!」
「・・うん。大丈夫だと思う。・・クロにも言っておくから」
「・・クロ?」
「あ・・主将」
「ほうほう。クロさん主将ね!じゃ、よろしく!」
「・・うんこっちこそ」
「じゃ!」
「・・・ハハッもう地獄絵図しかイメージできない」
「・・・どんまい。虎」


20170709


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