映画

ビデオカメラをテレビに繋げて映し出された画面には小さな赤ん坊が無邪気に笑っている。
何も汚れもないその白さは、危なげに僕は思えた。
にゅっと手がのびたと思うと画面が動き、赤ん坊が女性に抱きかかえられた姿を映し出す。
その女性は本当に幸せそうに笑っている。

「これは産まれて一ヶ月の時」

隣で、声。

次によちよち歩きしている男の子の姿が。
次は絵本を読んでいる。
画面が変わるたびに成長する少年の隣には、常に幸せそうな女性の姿があった。
何故この人がこんなにも嬉しそうに笑っているのか。
理解不能。

生まれた時から大きな爆弾を抱えているその子は、いつ死んでしまうのかわからないのに。
隣をこっそり見ると、笑っていた。
目の前で映し出されている女性と同じように、本当に幸せそうに。
幸せなのか。
どう思っているか聞きたくて、口を開いだが言葉を発する前に心臓が一つ、大きく鼓動。
体に、力が。
暗、て、ん――


光が戻った映画館。上映されていた映画は既にに終わっていて。
一緒に見ていた彼女は瞳をうるませていて席を立とうとしない。
相変わらず涙もろい。
しかし、自分はそんな感受性を好いていた。

「私、わかるなぁ……。あのお母さんの気持ち」
「ふぅん?まぁ、あの母親は強い人ではあったけど」
「きっとね、一緒にいるだけで幸せになれるんだよ。病気でも。
ううん。病気だからこそより強くそう思うんだね」

生きて、一緒にいるだけの事が奇跡的だって気がつきにくいんだ。
そう続けた彼女は涙を一杯にためておきながら笑っていた。

「こんなに感動したのは久々だよ」
「そっか」

ようやく立った彼女。
彼女に並んで歩きだす。その時にさりげなく手を握るとぬくもりを感じた。
それは確かな生の証なのだろう。
ふと彼女と事前が交わる。
彼女は、笑った。
とても幸せそうな笑みだった。


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