マフラー

学校の帰り道。
お互い、会話はなかった。
薔薇色に染まり始めた空は見慣れた風景なのに、悲しく思えた。往生際悪く隅に残る天色はまるで私のよう。
別れ道について、足を止めた。
ここで、いつもばいばいまた明日、と言って別れるのだ。
けど、今日は違う。
今日の別れは、違う。
もう本当に会えなくなる。遠くへ言ってしまう。
「じぁあ、お別れだね……」
元気のない声。
何か。何か、言わなければ。
これで最後なのだから。
「急だったから……。何もしてあげられなくて、ごめんね」
違う。
こんな事を話したいのではない。
「じゃあ、一つ。お願い、いいかな?」
「何?」
「ソレ、くれない?」
指したのはマフラー。それから自分のマフラーを指して、交換、と。
意図が読めずに首を傾げた。けれど最後の願いを断る理由もなく、頷く。
「巻いてあげる」
優しくマフラーを巻いてくれる。そして、私も。
「大切に使うね。これがあったら絶対に忘れないから」
「……う、ん。私も、忘れない」
忘れない。
絶対に。
「バイバイ」
ようやく出た、その一言。
何度も振り返って、最後には大声になってまで言い続ける。
「バイバイ!!」
バイバイ。共にいられた時間。
バイバイ。楽しい思い出。
バイバイ
もう、返事は返ってこない。
私は、前だけを向いて歩き始める。


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