友人以上恋人未満

それはまるで雪をわって萌え出た緑のような。
冷たく無音の世界にでも存在する。
そんな物なので。
この胸にある思いは。
その淡い思いが一体なんなのか一体なんなのか。
誰か教えて欲しい。


恋とは一種の病のだと思う。
相手の一挙一動で感情を左右されてしまう。
恋のせいで身が破滅した話も効く。
他人が自分の内に侵略するなんて考えたくもない。
だから、これは決してそんな物ではない。

彼女の言葉に返事をしつつ、その答えを探す。
彼女と共にいればおのずと答えは出るかと思ったが
余計にわからなくなる。
まるで袋小路。
すっと彼女が指差す方向を見た。
そこには一輪の花が。
鮮やかな紅の花弁が露を溜めていて。
白黒写真の中でその花だけに色をつけたかのような存在感。
彼女が指で花をつつく。
つるりと雫がこぼれ落ちた。
すると、どうだろう。
紅の色がより華やかに見えた。

「寒椿だ」

そうもらすと彼女は頬を緩ませて頷く。
この美しい物を彼女と共有している。
それが僅かに自分の心を暖かくさせた。
いつだってそうだ。
物だけではない。
時間。
温もり。
彼女を思う気持ちが自分を優しくさせる。
彼女の一挙一動。
その全てが愛おしい。
この思いは恋ではない。
これよりも深い何か。
もしこれに名前をつけるとしたら――


 

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