マルコside小説 <img src="//img.mobilerz.net/img/i/63880.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

#45 私の後悔




《これで、アイスクリームを捏ねる訳ですね…》
《バニラとラズベリーが見事に混ざりあって…》
《ほんと美味しそうです…》
《皆さんも是非食べて…》


「た、食べたいなぁ」

寝る前にちょうど観ていたテレビで、アイスクリームのお店が紹介されていた。

冷たい石板の上で、視聴者の食欲を煽る様に捏ね合わされているアイスに、まんまと私はのせられてしまった。

チラリと時計を見る。
時刻は、両針とも真上を指す寸前だ。

コンビニまで歩いて十分。夜中に一人で行くのは、正直怖いが、今の私はアイスに洗脳されている。

食べなければ死んでしまいそうな程だ。

よし。ダッシュで買いに行こう。

そうして、パジャマ姿に薄手のパーカーを羽織り、財布だけ持って、コンビニへと部屋を後にした。


念願のアイスを手に入れ、家路へと向かう途中、小さな鳴き声が耳に届く。

「ん?仔猫?」

鳴き声を頼りに目を配らせると、そこには小さな仔猫が三匹。仲良く並んでいるではないか。

「可愛い〜!!!」

それから暫く仔猫と戯れ、もう一度コンビニに戻り、ミルクと猫缶を買って再び戯れる。

そんな私は、家を出てから既に二時間近く経っている事に気付いていなかった。

たっぷり仔猫を堪能した私は、ご機嫌で部屋のドアを開けた。と、同時に大きな呼び掛けに、心臓が止まりそうになる。

「#name#!!何処行ってたんだい!?」

「わっ…っと、アイスクリーム…買いにコン…」

「携帯も持たないで、心配するだろい!!」

どうやら私が出た直後、部屋を訪れたらしい彼は、私が居ない事にかなり心配したらしい。

そう言えば、携帯持っていってなかったなと、時計を見れば二時間近く経っていた事に自分でも驚く。

「す、すみません。仔猫がいて…」

「猫…?で、こんな夜中に、そんな格好で彷徨いてたのかい?」

「は、はい…」

凄まじく怒っている彼に、私は、心臓がドキドキだ。

それから電話を掛け出したマルコ先輩は、帰って来た、すまないと、私を探しに行かせたのだろう人物に、安堵の連絡を入れている。

「ほんとにごめんなさい」

不本意だが、心配を掛けたのは事実なので、誠意を込めて謝った。

「何もなかったからいいものの…」

それからスッと伸びてきた手は、私の胸をぐにゅりと揉んできた。

「ひゃっ!?」

「ノーブラかよい…」

「ぇ…あ、そう言えば…」

忘れてたなと、未だ胸に手をやっている彼に目線を向けると、そこには恐ろしく怒って、そして冷淡な顔付きのマルコ先輩が写し出される。

「えっと…忘れてました」

すぐ帰るつもりだったしと付け加えるも、未だ無言の彼。

「マ、マルコ先輩…?」

私の呼び掛けに、グイッと顎をとられ、無言の圧力をかけてくる。


「禁止だ。これから夜に一人で彷徨くんじゃねぇよい」

「ぇ…いや、子供じゃな…」

「禁止だ」

「……」

まさかの禁止令に、少し反抗的な眼を彼に向ける。

「なんだい?その眼は?」

「だって…そんな…」

すると、鋭く、そして口答えするなという目付きで、私を圧迫してきた。

初めて見るそんな彼に、私は言葉を失う。

「わかったかい?」

「………」

確かに、心配を掛けてしまったが、今回が少し異例だっただけで、次からは気を付ければいいじゃないか。

それに、夜って何時から?まさか暗くなってから、明るくなるまで、私は一人で外を歩けないのか…

そんな無理な禁止令に、未だ納得出来ずにいると、

「まだわかってない様だねぃ」

それから、女が夜中に一人で彷徨くなだの、格好が頂けないだの、襲われたいのかだのと、彼のお説教は永遠と続いた。

言っている事も分かるし、心配してくれているのも十分承知している。

しかし、あまりにだらだらと続くお説教に、私は咄嗟に口を開いてしまった。

「もう!分かってますよ!しつこいです!!」

その瞬間ハッとした。
言ってしまったと。

何故か無言になった彼に、居たたまれなくなった私は、買ってきたアイスを放り出し、寝室へ逃げる様に身を隠してしまう。

部屋の扉をバタンと閉め、素早くベットに潜り込み、先程の発言に後悔する。

思わず口に出してしまったといえ、心配してくれた彼に、向ける言葉ではない。

彼が来たら謝ろう。
もう時期来てくれるだろう彼に、私は、ベットの中で謝罪の言葉を考える。

すると、ガチャリと玄関の扉が閉まる音がした。

「え……」

余りにも子供のじみた私の行為に、呆れて帰ってしまったのか…

一気に涙腺が緩んだ。
何て事をしてしまったんだと。

急いでベットから飛び降り、玄関へ向かうべく部屋の扉を勢いよく開ける。

開けた瞬間目に入ったのは、腕を組み、悪戯な顔をしたマルコ先輩。

「ククッ。引っ掛かったねい」

「……っ!」

そんな彼の悪戯に、まんまと騙された私は、勢いよく彼の胸に抱き着いた。

「ヒック…ご…ごめんなさい」

泣きながら謝る私を、優しく抱き返しながら、

「ん。いいよい」

だから泣くなと、世話の焼ける子だなと言いながら、頭を撫でてくれた。

「マルコ…先輩…」

こんな私を簡単に掌で転がす彼に、敵わないなと改めて思い、そして、無性に愛しさに覆われた私は、

「マルコ先輩…抱いてください」

直ぐにでも、彼と一つになりたくなった。


「なっ!?#name#…」

そうして私の要望に、かなりのおまけ付きで答えてくれた彼は、とても満足そうに私を抱き締め、眠りに就いたのだった。














「ぁ……」

「何朝っぱらから突っ立てんだい?」

「これ…」

「あー、#name#がちゃんと仕舞わないからだろい」

「ぅっ…忘れてました」

「ククッ。ドジだねぃ」



そこには、大惨事をおこしてまで食べたかったアイスが、無惨に溶けて、大きな水溜まりを作っていたのだった。



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