マルコside小説
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#43 彼の五分は∞
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「ぅぅーん…」
「ぅうーん……」
「く…苦しい!!?」
私は凄まじい息苦しさに、強制的に現実世界へと引き戻された。
息苦しさの原因…
「ン…」
そう。彼の足と腕が、私にのし掛かっていたからだ。
「もう…重たいです、よっ」
気持ち良さげに、うっすらと笑みさえ浮かべ寝ているマルコ先輩をやんわりと押し退ける。
「グッ…グゥー」
「グッって…可愛いですっ」
そう言えば、こんな明るい時に彼の寝顔を見るのは初めてだなと気付いた私は、
この機会にじっくり鑑賞しようと、頬杖を付き彼の顔を覗きこむ。
「フフ。子どもみたい」
頼りがいがあって、強引だけど優しくて、細かい所まで気付いてくれて、時に厳しくて、そしてなりより、私を愛してくれて…
この大きな手に何度頭を撫でられたか。
何度抱き締められたか。
もう数えきれないくらい、私はこの手に救われている。
そんな彼の手に指を絡めながら、自分の頬に持ってくる。
「幸せです」
優しい光が部屋を照らす中、私は心の底から幸せを感じていた。
そんな幸せを噛み締めながら甘い一時を満喫していると、なにやら彼がもぞもぞと胸に擦り寄ってきた。
「ほんと、可愛いっ」
母性本能というやつなのか、そんな彼の行動に頬が緩む。
よしよしと頭を撫でながら、甘えん坊ですねと口にすれば、それに答える様に胸に手が降りてくる。
それをそっと退けると、また、磁石の様に胸に吸い寄せられる彼の手。
これまた退けてみれば、またもや定位置かの様に戻ってくる。
「……。起きてますよね?」
返事はない。
寝ている人間が、ああも確実に胸へと辿り着ける訳がない。
「おーきよっと」
私はわざとらしく言葉を発しながら起き上がると同時に、グイっと腕を引っ張られ元の位置に戻される。
「ほら、起きてましたね」
「・・・・」
「まだ寝ますか?」
私は起きたいなと、彼に話しかけるも朝から何がしたいのか胸に顔を埋めたまま無言の彼。
「もしかして・・・寝ぼけてます?」
否、寝ぼけてる人間があんなに強く腕を引けないだろう。
「そろそろ起きないと、学校遅れますよ?」
本当は後十分くらいは大丈夫な時間なのだが、既に目が冴えてしまった私は早く支度を始めたいのだ。
「まだ寝ててくださいね」
そう告げて、彼の腕からすり抜けようとするが、逃すまいと力を込める彼。
「もう。マルコ先輩」
離してくださいと、胸にうずくまる彼の頭をやんわり撫でながら少し強めに肩を押した。
「・・・もう少しいいだろい」
少し不機嫌に、そして拗ねる様な眼差しで見上げてくる彼に、
「だって・・・胸触るから」
朝から厭らしいですと、起きる理由をこじ付けた。
「前に言ったろい」
胸を触っていると、落ち着くんだと。
確かに言っていたが・・・触られる方の身にもなって欲しい。
しかし、あんな拗ねた目で見詰められると、ダメだなんて言える訳がない。
「じゃぁ、後、五分だけですよ?」
そしたら起きましょうねと言った途端に、パジャマの裾をズリッと上に捲し上げられる。
「ちょっと、先輩!」
そう言う意味ではないと、彼に伝えようとしだが、
それはもう幸せそうに、私の胸を満喫しているマルコ先輩に私は言葉を失ってしまうのだった。
「#name#、塩取ってくれい」
「・・・・どうぞ」
「なんだい?ご機嫌斜めかい?」
「いいえ。もういいです」
あの後、胸だけでは治まらなかった彼に、朝からさんざん啼かされ大遅刻をしてしまう羽目になったのだ。
「後、五分って言ったのに・・・」
「ん?何か言ったかい?」
「…いいえ」