マルコside小説 <img src="//img.mobilerz.net/img/i/63880.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

#51 危険なフライトvol




そうして一夜明け、最終日を明日に控えた今日は午後から私の両親に会う事になっている。

「マルコ先輩…朝ですよ」

「ん…#name#…」

「もぅ…」

昨日散々疲れたと言って観光もしなかった彼は、お約束の様にベッドで豹変した。
確かに疲れていたのは本当だろうが、翌朝起きられないくらいなら止めておけばよかったのに…

「まだ眠たいですか?起きれません?」

「…起きても…いいよい」

「ふふ。じゃぁ起きましょうか?」

そうして、いつもより二割増しの半目を擦りながら、もぞもぞとベットから降りてくる彼。

「約束の時間までどうします?」

「ん、#name#が行きたい所付き合うよい」

「本当に?ぇ、じゃぁ、どこ行こうかな…」

「ククッ、楽しそうだねい」

「はいっ! マルコ先輩と一緒ですからね!」

「っ! #name#…お前はまったく、朝から誘ってんのかい?」

「断じて違いますよ。どこ行こうかなぁ」

「……そうかよい」

そんな朝から勘違いをしている彼をさらりと否定し、呆れたような言葉を吐きながらも、優しく私の頬に手を添えて近づいてくる彼の唇を受け止めた後、私達はスイスの街へと足を向けたのだった。

「えっと、あまり遠くは行けないですからね…この辺りで観光しましょうか?」

「ん、任せるよい。で?何処に行きたいんだい?」

「ぇーと、ぅわ…動物園がありますよ!見たことない動物がいっぱいです!あ!オペラハウスだって…見た事あります?生オペラ?あっ!」

「クク、落ち着けよい。じゃぁまず動物園行くかい?」

「はい! さ!行きましょう!」

「ククッ」

海外なんてどの場所に行こうが心が踊ってしまうのだが、ヨーロッパはまた格別に街並みが素敵な事もあり、私は彼が呆れてしまう程浮かれてしまっていた。

そんな私に連れ回され少しお疲れ気味の彼なのだが、文句も言わず "はいはい"と頷き付き合ってくれている。これは後でたんまりとお礼をしなければと思いながらも、甘えっぱなしの私の足は止まらなかった。

「見てください!あの猿!ちょっとマルコ先輩に似てますね」

「…全然似てねぇよい」

「え?ほら、頭に金髪がちょこんと生えてて…」

「…あんまり嬉しくないねぃ」

「ふふ、可愛いですよ?」

「そうかねい…あー、時間、そろそろ戻った方がいいんじゃねぇかい?」

「ん?あ、ほんとですね」

そうして、あっという間に約束の時間が迫ってきた為、私達は両親の待つレストランに向かう事になったのだが…不安だ。


しかし私の不安は見事に外れ、常識的な対応と彼への好意的な態度の両親は、最後に"宜しくお願いします"と深々と頭を下げ、時間がなかったのか早々と仕事場に戻ってしまった。

「何だか…拍子抜けです」

「ん?いいご両親じゃねぇか」

「あ、ありがとうございます」

「さ、観光は今日までだよい、他に行きたい所はないのかい?」

「ぁ…はい、次はマルコ先輩が好きな所行きましょうか?」

「オレはいいよい、#name#と一緒ならねい」

そんな嬉し恥ずかしな言葉をさらりと言われ、少し染まった頬を見られないように彼の手を引っ張る形で街並みを歩き出した。

「#name#?行きたい所は決まったのかい?」

「特に…ぶらぶらと」

「さっきは色々候補があったじゃねぇか、行かなくていいのかい?」

「はい、こうして歩くだけで十分です」

確かに興味をそそる建物などは沢山あったのだが、いつもと違う街並みを、彼と共に歩くだけでも十分楽しかった私は、不思議そうに首を傾げる彼に苦笑いを返しはぐれない様に腕を絡ませた。

「まぁ、#name#がいいならいいけどよい」

思い付いたら言えよ、と言葉を繋ぐ彼に頷きを返し、私達はぶらぶらと探索をしながら、お土産を買ったり目に留まったものを眺め笑いあったりと旅行を満喫していた。

「お、あそこの塔登らねぇかい?」

「ん?あ、夕日が綺麗に見えそうですね!行きましょう!」

そんな彼の提案で足を向けた場所は、二つ列なった街並みを一望できる塔。

「わ、人も少ないしベストスポットですね!」

「だねぃ」

丁度陽が傾き出した空は、一面がピンクがかっていてとても幻想的だった。
そんな思わず目を細めてしまう景色に見とれていると、ふわりと肩に乗せられた彼の手。それに答えるように頭を預ければ、彼の口が開きだす。

「#name#は幸せだねい。こんなにオレに愛されて」

「ん?ふふ、キザですね」

「ほんとの事だろい?」

「ふふ。はい、幸せです」

「これから先も…もっと幸せにしてやるよい」

「わぁ…」

「…何だいそれは」

「あ、いえ。お願いしますね」

「…。あぁ、だから帰ったら籍入れるよい」

「は?婚約って籍入れるんでしたっけ?」

「…いや。さっきご両親に了承もらったんだい」

「え?いつの間に…」

「嫌かい?」

「い、嫌じゃないですよ。ですけど…私なんかでいいんですか?」

「はっ、そんなのいいに決まってんだろい。寧ろ、#name#じゃないと嫌だよい」

「っ! でも…不安なんです。マルコ先輩みたいな素敵な人…」

「#name#、よく聞けよい。オレはこの先一生、#name#の傍にいるよい」

「っ…! はい」

「#name#は?」

「ぅ…私も、一生…マルコ…先輩の傍に…います」

「途切れ途切れに言ってんじゃねぇよい!言い直せい!」

「む、むりです。恥ずかし過ぎます」

「人生の節目だよい、頑張れ#name#」

「節目…今節目なんですか?」

「節目だろい?#name#の人生オレに預けるんだよい?」

「あ、そう言う事なんですね、成る程成る程」

「ほれい、言えよい」

「…ふふ。あ、すみません。恥ずかし過ぎて笑いが…」

「はぁ…まぁいいよい。今夜嫌って程言わせてやろうかねい」

「はっ!居ます居ます!一生傍に居ますよ!!」

「ふっ、遅いよい」


そうして人生の節目?となった今回の旅行は、私の心に生涯残っていくだろう彼との思い出を記憶して、幕を閉じたのだった。





「あっ!!止めて下さいよ!飛行機の中ですよ!!」

「関係ないねい」

「ちょっと、昨日散々…」

「ククッ、帰ったら#name#は嫁になるんだねい…オレの…ふふ…嫁」

「……」




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