ローside小説 | ナノ
#05 彼の野心
マルコside
#name#に思いを告げてから、家に帰っても、全く何も手に付かなかった。
相手の気持ちが分からないと言うのは、こんなにも不安感を募らせるのだと…
初めて気付いた。
#name#はどうするのだろう…。オレを選んでくれるのか、彼の元に帰るのか…
こんな不安な気持ちになるのなら、浮気する奴なんて最低だと、彼女に植え付ければ良かったか…
嫌、あれはあれで良かったはずだ。
これから先、ああ言う考えを持っていた方が、自分が救われる。
夕飯を食いに来ないオレを、イゾウが呼びに来た。
「マルコ、飯くわないのか?」
家に居る時は、食事はなるべく皆でとると、オレは心掛けていた。
大家族だ。コミュニケーションも大切だ。
「あぁ、腹壊してんだよい。」
だから要らないと、そう告げれば、へぇーお前が?
と、全く信用してねぇといった面で出ていった。
煩せぇよい。
今はほっといて欲しい…。
オレはそれどころじゃねぇんだ。
そして次の日の朝、いつもの様にサッチが呼びに来る。
「あれ?お前まだ着替えてねぇの?」
今日も休むのかと。呆れた感じで聞いてきたが、オレは腹が痛いのだと告げる。
「腹が痛ぇ?」
お前がか?と、イゾウと同じ反応しやがって…
本当は、痛くも痒くもなかったが、オレだって腹くらい痛くなる…
そんなオレに、じゃお大事にと、#name#の事で何かあったと、唯一分かるあいつは、何も聞かず扉を閉めた。
ここは、さすが長い付き合いだと。サッチに感謝する。
陽が傾きかけた頃、何度目かの溜め息を吐いたと同時に、無機質な電子音が響いた。
知らない番号だ。
だが、#name#だと直感的に思った。
さぁ、どっちだ?
愛しの彼女はどんな結論をだした?
電話に出たが、言葉が出てこねぇ…柄にもなく緊張感から、携帯を持つ手まで震えやがる。
「#name#ですけど…マルコ先輩ですか?」
そんな彼女の声を聞いただけで、胸の鼓動が高鳴っていく。
"そうだ "と告げると今いいかと聞かれた。
その声色から…オレは、あぁ、ダメだと直ぐに悟った。
会って話をと言われたが…
無理だ。ポーカーフェイスはオレの専売特許だが、こんな気持ちは初めてで、正直、#name#を目の前に、どんな面を見せればいいのかわからなかったからだ。
電話でいいと、気遣う振りをして、逃げた。
それから、オレの予想通り、彼の事が好きだと、ごめんなさいと、極めつけは、恋愛感情なしで慕っていますと…。
グサリときた。
まさに、心臓を一衝きだ。
感謝してますと、何度もお礼を述べていたが、心ここにあらずである。
何とか自分を引き戻し、分かったと、ずっと見方でいると、偽りの返事をした。
彼女が決めた事だ。
どうしようもない。
惚れた女の幸せを願うのも立派な男だ。
と、自分に言い聞かせた。
だが、オレはこんなに執念深い性格だったのか、隙あらば奪ってやると、秘かに思っていたのである。
最後に、腹の調子を聞かれた
サッチに聞いたのだと。
そんな、オレへの配慮に、心が締め付けられる想いがした
「お、マルコ!腹の調子はもういいのか?」
「…サッチ。三回死んどけよい」
オレは下痢じゃねぇ