ローside小説 | ナノ

#01 瞳の奥底





ローside




暫く家の前で待ったが一向に帰ってくる気配がねぇ。
門の前で男がずっと立っていればまるで不審者だ。
取り敢えず玄関の前で待つとするかと、長期戦になればこちらの方が都合がいいなどと考え移動した。

#name#は今何を思っているだろう?
浮気をされ、裏切られたとでも思っているだろうか?全くの誤解だと言うのに…

そんな彼女の心境を想像している内にだんだんと辺りが暗くなる。
今日は帰って来ないかもしれない…
ナミやロビン辺りの家に泊まる可能性だってある。


しかし、それでもいいと思った。
今、ここで、お前を待っているという事実がオレの誠意でもある。


#name#に会ったら何と言おう?
まず、誤解を解くのが先決だ。
それから…あいつは何と言うだろうか…
分かって、許してくれるか?
不意をつかれたにせよ浮気だと泣きじゃくるか…
最悪、別れ話にでもなるか?


…別れる? 不意に浮かんだその言葉にブルリと身震いをした。そんなの御免だ。絶対に。
#name#は、やっと見つけたオレの理想の女だ。
簡単に手放せるもんじゃねぇ…

だが、もう嫌いだと、愛想を尽かされたら?
相思相愛でなけりゃ恋人とは呼べない。
9:1でもいい。オレの事を想っていてくれれば。


そこまで考えてオレは笑いが出た。
溺れ過ぎだろう…と。


恋は狂気であるとよく言ったものだ。
まさにオレは#name#に狂ってやがる。

いつからオレはこんな情けない男になった…?
#name#の存在は、こんなにもオレを弱らせる。その威力は凄まじい程の影響力だ。益々…手放せねぇ…。

そんな女に、これから先出会えるのはロスタイムでアウンゴールを決めるようなもんだ。つまり、限りなく確立は低いという事。


嫌だと言っても、手放すつもりはない。
お前を幸せにするのはオレ以外いねぇ…


大事にしてきたつもりだ。何よりも。
大事にし過ぎて、指一本触れられやしねぇ…
本当は、壊れるほど抱いてしまいたい。

彼女への想いを次々に思い描きながら疑問が生まれた。
何を怖がっているんだ…オレは。
#name#だってオレに惚れてるはずだ。
惚れた男に抱かれるのに何を拒んだりするものか…

抱いてしまおう。そう秘かに決意を固めた。
お前にしか見せないオレを、オレにしか見せないお前を…もっと深く感じ合おうと。





辺りがだんだん明るくなってきやがった。
同じ体制で何も口にしていないせいか、座っているのに立ち眩みがしやがる。

だが、虚無感に覆われて自己愛すら感じねぇ。
#name#の為なら、このまま死んじまっても悔いはないだろう…
あるとすれば…誤解されたままだということか…


やっぱりオレは狂ってやがる。
そんな事を考え目を閉じ自嘲した。



暫く目を閉じたままじっとしていると、僅かに聞こえる足音に意識が集中する。
やっと帰ってきたか……

気配を殺しているつもりなのか、忍び足で近付いて来るその音がオレの前まで来たところで、ゆっくりと口を開いた。

「遅せぇ…」

すると今までここに居たのかと、心底驚いた表情を見せやがる。

だが、そんな驚きの表情の奥に戸惑いと、何か…罪悪感の様なものを抱えた瞳を宿した彼女を、オレはしっかりと捉えたのだ。

取り敢えず中へ入れと案内され、珈琲でいいかとキッチンに向かって行く後ろ姿を見詰めながら、ふと、考える。

何だ…さっきの目は?
#name#なら、真っ先に昨日の事を言ってくるかと思ったが…
思い詰めた顔しやがって…

未だにキッチンから出てこない#name#に、少し苛立ち此方に呼び付けた。


まず、誤解を解く言葉を述べてみる。
チラリとも此方を見ない彼女が発した言葉に、オレは嫌な汗がたらりと背中を流れるのを感じていた。

そんな彼女が口にした考えさせてくれと言う言葉。
何を考えるんだ?
冗談はよしてくれ…


だが、今は何を言っても無駄だろう。様子もいつもと違う。
本当は力ずくで言い聞かせたい処だが、そんな気持ちをぐっと堪え溜息を吐く。

それに、#name#のあの目を見た時からどっと疲労感に襲われて動くのも億劫だ。
帰るか…伝えるべき事は伝えたはずだ。
最後に、お前の事は本気だと伝えておこう。



外に出ると鬱陶しい太陽が、寝不足で疲れきった体に追い討ちをかける様に、眩しい光を放ちながら登り始めていた。



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