マルコside小説 | ナノ

#37 今の私



今日は日曜日。

いつもは、マルコ先輩と過ごすのだが、今日は親父様の用事で会えないのだ。

たまには、彼と過ごさない休日もいいなと、少しワクワクしたのは内緒だ。

まず、軽く掃除と洗濯。
それから…

そうだ!この前彼と見ていた雑誌の、ワンピースでも見に行こうかな。

あ、後あれも欲しいな…
後あれと、あれも…

すっかり物欲モードにスイッチが入ってしまった私は、次々と欲しいものリストが完成していく。

ナミかロビンでも誘おうかな…。

買い物している時はいいが、お茶をする時は、一人は少し寂しい。

一応メールしようかなと、送信ボタンを押そうとした所で手を止める。

たまには一人を満喫するのも悪くないなと、電話を仕舞う事にしたのだ。


ファッションビルが建ち並ぶ街道を、行ったり来たりし、お目当てのお店に到着するも、雑誌に搭載してあったワンピースは売り切れていた。

だよね、あの雑誌が発売されて、半月は経つ。
売れてしまって当たり前だ。

かなり残念だが、無いものは仕様がない。

ワンピースは諦めたものの、物欲スイッチONの私は、服だの靴だのと、気付けば、紙袋五つも持ち歩いていた。

この辺にしとかないと、重たいなと思い、喉も乾いたし、何処かカフェにでも…と思った瞬間、

「大荷物だな…」

私に話しかける人物がいたのだ。


振り向くと、そこにはクラスメートのペンギンくんが立っていた。

「あ、ペンギンくん」

こんにちはと、挨拶をする。彼は、ローの幼なじみで一番の親友だ。

ローと付き合っていた頃は何度か話したが、別れてからは一度も言葉を交わしていない。

あんな別れ方だ。彼も良く思っていないだろう。
少し気まずい。

「ペンギンくんは何してるの?」

買い物?それとも散歩?など、気まずさから口数が多くなる。

「フフ…本屋にちょっとな」

まるで私の心を見透かしている様な態度に、ローが重なる。

そう。さすが幼なじみ。
どことなく雰囲気が似ている気がする。

「そ、そうか。あ、じゃぁまた明日」

特に話す話題もないので、その場を後にしようとした所…

「一人か?なら少し付き合ってくれ」

と、ローさながらの強引さで、私の両手を塞いでいた紙袋をスッと取られ、歩き出す彼。

「え、あの…」

「お茶するだけだ」

いいだろ?と言う彼に、やはりローに似ているなと思った。


「オレの奢りだ。」

好きな物頼めと言われ、

「あ、ありがとう…じゃぁカフェオレ頂きます」

何だか不思議な気分だ。
彼とは友達でもないし…何だろう。

元彼の友達?でいいのだろうか…

そんな彼と、話す話題などある筈もなく、沈黙が続く。

「フフ。あー、彼とは上手くいっているのか?」

やはり。そう言う話題しかないだろうとは思っていたが…

彼=ローに言っているようで、言葉に詰まる。

「今日の事はローには言わない」

だからそんなに警戒するなと、また心を読み取られる。

「ぅ、うん。順調だよ」

「それは良かった」

順調じゃなきゃ、あいつが報われない。と、彼は笑いすら浮かべているが、私は笑えない。

「ローなら大丈夫だ。」

まだ未練はあるみたいだが…#name#が気にする事でもないしな。と、

言われるだろうと想像していた言葉だったが、実際に言われると、心が軽くなった気がした。

「ありがとう…」

要らぬ気をかけさせてしまったと、謝罪の気持ちを込めてお礼を言う。

「礼なんて言うな」

親友の元彼女だ。不幸になるより、幸せになって欲しいだろ。

これからも、オレに出来る事なら助けになるぞと、

そんな優しい言葉に、ローは良い友達がいるなと、なにか安心した気持ちになった。


そうして彼と別れた後、少し思いに耽る。

今日のペンギンくんとの時間は、ローと付き合っていた過去を証明された様で、

こういう、ふとした出会いで、忘れていたローとの時間を思い出していくんだなと、

今はマルコ先輩で一杯の頭だか、ローのお陰で今の自分がいる事に、少し嬉しい気持ちと、ローへの感謝の気持ちを感じた。

私は今の自分が好きだ。

マルコ先輩を好きな私。

ローと付き合っていた私。

これから先も、この気持ちを忘れない様に、マルコ先輩との時間も大切に過ごそうと、家路に着いたのだった。




「ふぅ、重かった」

「おかえり。買い物かい?」

「!?来てたんですか?」

だったら連絡してくださいよと、彼の予期せぬ登場に、急いで駆け寄る。

「あぁ、今来たとこだい」

そして、ほらと渡された紙袋…

中を開けると、

「わっ!これ…」

それは今日一番のお目当てで、既に売り切れていたワンピースだった。

「欲しそうにしてただろい?」

売り切れてたから、急いで作らせたんだと言う彼に、

大好きですと、何度もお礼をし、こんな素敵なサプライズをしてくれる彼に、

彼を好きになって良かったと、彼が私を好きでいてくれて幸せだと、たまらない気持ちになったのだ。





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