マルコside小説 | ナノ

#35 彼の特権



今日は、もう時期開催される体育祭の練習で、一日中体操着で過ごすというなんとも楽チンな日である。

「スカートじゃないから、気にせず寝転べるね!」

「あら、スカートよりも、その格好の方が危険かもよ?」

危険?どの辺が?

この学校の体操着は、やたらと短いショートパンツだ。
しかも、身体のラインが丸見えである。

「でも、スカートより楽!」

私はそう言って、寝転ろがったまま、足を上げたり、回したりと、足が細くなります様にと運動していた。


「わっ!!」

「#name#。行儀が悪いよい」

そんな言葉とともに、足首をガシッと掴まれた。

「マ、マルコ先輩…」

私の脚痩せ運動が気に入らないのか、目線だけで
"やめろ"と威圧をかけてくる彼。

「す、すみません」

反射的に謝罪の言葉がでてくる。

いつもは、私が叱る事が多いが(下ネタ限定で)、こう言う行儀だとか、常識、言葉使いなど、意外とうるさい彼なのだ。

この間も、学食で脚を組んで食事をしていた所を、突然現れた彼に注意されたばかりだ。

「分かったならいいよい」

よしよしと、頭を撫でながら、軽くロビンに挨拶をして、隣に腰を降ろしてくる彼。

確実に私は、彼の躾の行き届いた女に育っている。

叱られるのは嫌だが、そんな彼も大好きなのは…仕方がない。



「あれ?マルコ先輩達は何してるんですか?」

しかも、制服のままでと、聞いてみれば、

「あー、オレは特に」

何もしていないと言う彼に、修学旅行も行かない程だ。
体育祭も出ないのだろうと、そうですかとだけ言っておいた。


「それにしても…」

その格好は危ないねい。と、
ジロジロと私の体操着姿を眺めながら、眉間に皴を寄せるマルコ先輩。


「危ない…?」

先程ロビンも言っていたが、別に下着がはみ出ている訳でもなく、この学校の女子は皆着ている。

何が危ないのかさっぱりな私に、

「体のラインが丸分かりだよい…」と、

いつもなら喜びそうなのだが、今の彼はなにやらご機嫌麗しくないようだ。

「え…でも、皆着てますよ」

そうだ。そんな不機嫌な顔をされても、学校指定の体操着、どう仕様もない。


「…。ちょっと待ってろい」

そう言って、眉間に皺を刻んだまま、何処かに行ってしまったマルコ先輩。


ね?どう仕様もないよね?と、ロビンに同意を求めてみる。

「フフ。そうね」

ほら、彼女だってそう言っているではないか。
私は悪くないと、安心した処で、

「ぶほっ!!」

「これ着とけよい」

何かを顔面に被せられた私。手に取ってみると、

「ジャージ?」

それは…恐らく彼のだろう。私が着れば、膝まである大きめなジャージだった。

「着なきゃダメですか?」

私だけ恥ずかしいですと、意義を唱えるも、

「着なきゃダメだ」

とピシャリと言い放つ彼。
仕様がないかと、そこは折れた私は、素直に袖を通したのだった。








「#name#こっち来いよい」

キッチンで珈琲を淹れていた私に、彼が呼び掛ける。

「はい!なんですか?」

淹れたばかりの珈琲を両手に、彼に近寄れば…

「思う存分着ていいよい」

「…ここで?今ですか?」

何故?どうして?と、意味不明な事をする彼に問いただす。

「オレだけの特権だい」

「…いや、もうたくさんの人に見られてますよ」

「これからの話だよい」

もう二度と、ジャージなしでは着るなと言い張る彼の手には、


真新しい、我が校の体操着が握られていた。


「き、着たくないです」

なんでわざわざお家でと、拒否するが、着ろと、凄んでくるマルコ先輩に、無理矢理着せられる事になってしまうのだった。


「いいねぃ…体操着」

「先輩…」






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