マルコside小説 | ナノ

#33 彼女と彼



あの出来事から、マルコ先輩の側を、片時も離れたくない病に侵されてしまった。
彼の事が愛しくて堪らないのだ。

"ずっと傍にいる" そんな彼の言葉が、私の心を捕らえて離さない。

この気持ちが永遠に続きます様に…私の今一番の願いである。






「なーんか、幸せそうね?#name#」

「うんっ!」

「いいなー。お金持ちの彼氏」

そこですか?ナミ…。
彼女はモテルのに、恋人を作らない。
理由は簡単。男よりお金だからである。

「ねー、マルコ先輩の兄弟、誰か紹介してよ?」

私も金持ちと遊びたい、贅沢したいなど、不純な申し出をしてきた彼女。

遊ぶだけならいいかと、
贅沢できるかは分からないが…

「じゃぁ、聞いてみるね」

私は、マルコ先輩にお願いしてみる事にしたのだ。



「#name#の友達と?」

「はい…。何処か遊びに連れて行って欲しいんです」

たまにはどうですか?と、ナミの不純な動機を隠しつつ、お願いしてみる。

「…で?誰連れていけばいいんだい?」

「あ、マルコ先輩の御兄弟ならどなたでも」

そう。彼の兄弟ならば誰でも構わない。

「…わかったよい」

「ありがとうございます!」

じゃぁ、土曜日に!
すんなり了承してくれたので、お礼を言い教室へ帰ろうと足を踏み出せば、

「#name#。ちょっと待てぃ」

「はい?」

すると腕をグイグイ引っ張られ、使われていない教室に連れて行かれる。

「マルコ先輩……」

「さっきの、もう一度お願いしてみろい」

「…は?」

「ほら」

何なのだろう…お願い?
…あぁ、成る程。

私の腰を抱え込み、早くしろと目で訴えている彼。
だが、その顔は若干…鼻の下が伸びている。

私は、彼の首に絡み付き、精一杯の甘えた声で、彼の要望に答えた。

「マルコ先輩…何処かに連れて行ってください」

「…っ!ぉ、おう」

彼には珍しく、少し顔を赤らめ、楽しみにしておけと。
どうやら成功したらしい。

私が彼に、執拗にべったりになってから、どうやら彼は
"お願い"プレイがツボに入ったらしい。

どこに萌え要素があるのかは分からないが、彼が希望するのなら、出来る限りは…叶えてあげようと思う。





そして、当日。

「待たせたねい」

「いいぇ!あ、小学生の頃からの友人で、ナミちゃんです」

「初めまして。」

「あぁ。#name#がいつも世話になってるよい」

ありがとうと、お決まりの挨拶を交わし、彼の連れてきた兄弟とは…

「やっ。おれサッチ。よろしくな」

やはり。サッチ先輩だ。

彼は、かなりの確率でサッチ先輩と行動している。
皆、仲は良さそうだが、サッチ先輩は特に気が合うのだろう。


さぁ行こうかと、マルコ先輩の運転する車に乗り込み、向かった先は

「空港?」

「おう。美味いもん食いに行こうかい」

なんと今から、北海道に日帰りで行くと言い出した彼。
しかも、自家用ジェットだ。

「凄い!!スケールが違うわ」

「ささ、ナミちゃんお手をどうぞ」

感激しているナミを、サッチ先輩はデレデレしながらエスコートしている…

何か、サッチ先輩とサンジ君がかぶるのは気のせいだろうか…

「#name#も行くよい」

ナミとサッチ先輩を観察していると、何してるんだと手を取られ、二十人乗り程の、自家用ジェットに乗せられた。

「わぁ…内装豪華ですね」

「ククッ。気に入ったかい?」

思わず口から出てしまうくらい豪華な作りに、溜め息さえ出てきそうだ。

あちらでは、ナミがキャーキャーと騒ぎ、傍らでは、飲み物やら果物やらを彼女に進める…下心見え見えなサッチ先輩。

「あっちはあっちで、上手くやるだろい」

ほっとけと、またもや二人に視線を向けている私に、マルコ先輩が口を開いた。

そうだなと、ナミは簡単に落とせる様なたまじゃない。心配と言えば…サッチ先輩の方だ…。


そろそろ出発すると、一声あった後、凄まじいエンジン音と共に、体がゾワッとした。

飛行機が離陸する時の衝撃に、思わず彼の腕にしがみ付く。

「大丈夫だよい。落ちたりしねぇよい」と、

私の肩を抱いてくれるマルコ先輩を見て、

「さ!ナミちゃんも」

両手を広げ、自分もナミを抱き込もうとしているサッチ先輩。
羨ましかったのだろうか…

「あ、私平気です」

「あ…そう…」

サッチ先輩。ナミは手強いですよ。

そうして無事、北海道に着き、美味しいものをたらふく食べ、満喫した私達。

ナミとサッチ先輩は、割と気が合うみたいで、端から見れば恋人同士に見えなくもない。

「#name#。次は二人きりで旅行にでも行こうかい?」

二人にばかり気を取られている私に、彼はそんな事を言い出した。

「あ、はい。行きたいですね」

しまったと、二人が気になって、マルコ先輩をあまり構っていなかったと反省する。

「ん。楽しみだよい。二人きり」

やたら"二人きり"を強調する彼に、申し訳なくなり、二人の事はほっておいて大丈夫だろうと、観察をやめる事にしたのだ。


日帰りと言う事もあり、そろそろ帰ろうかと、乗ってきた飛行機に乗り込む。

飛行場に着き、ナミはサッチ先輩が送ると言い出し、二人とはそこで別れた。


帰りの車の中で、貴重な体験ができたと、凄く楽しかったと彼にお礼をする。

「それは良かったよい。で、今日は泊まっていっていいかい?」

そんな事、聞かなくてもいいに決まっているのに、片眉を上げ、少し意地悪そうな顔で聞く彼に、

「じゃぁ、一緒にお風呂入りましょうね」と、

冗談を言ってみると、

「なっ!?急いで帰るよい」

ニコニコ顔で、大急ぎで車を飛ばすマルコ先輩に、
冗談ですとは言えなくなった私は…長い長い入浴をする事になってしまったのだ。

「さぁ、もう一回言ってくれい」

「……イッショニ、オフロニハイッテクダサイ」

「#name#……。やり直しだい」

「ぅぅ…」










(は?ごめん、よく聞こえなかった)

「もぉ。だから、サッチ先輩と付き合う事になったの!」

(………ごめん、あたし耳鼻科行ってくる)

「こらっ!なんであんたが現実逃避すんのよ!!」

(マルコ先輩!事件です!)




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