マルコside小説 | ナノ

#30 彼女の覚悟



我慢していた思いが、彼によっていとも簡単に崩れ落ちた

彼の温もりが、優しい言葉が、私をどんどん溶かしていく

懐かしい彼の匂いが、私の心に染み渡り、安心感を覚えていく


このまま、現実に目を背けて何もかも忘れてしまいたい。

そんな思いで、だだ、ローに縋りつく様に泣き付いた。


かなりの時間、泣いていたと思う。
喉もカラカラで、酸素不足だろう、頭もクラクラとしていた。

嗚咽が治まってきた処で、彼が私の肩をやんわりと押し返す。

そして、顔が近づいてきたと同時に、私は理性を無理やり引き戻した。


「ダメ・・・ダメだよ・・・・」

そう。ダメだ。ここで流されてはいけない。
私は咄嗟に俯いた。


このままローとキスなんてしたら、私は自分が許せなくなる。

私はローを一度裏切ったのだ。二度目は許されない。

彼に期待させる様なまねはしてはいけない。

だって、私の心はマルコ先輩に溺れているのだから。

ローの元へは・・・・帰れない。



「・・・いいんだ。何も考えんな」

「・・・・っ」

まただ。いつもローは私の心を読んでしまう。
でも・・・・でもダメだよ。



「・・・んっ!!」

遅かった。彼は待ってくれなかったのだ。

”何も考えんな”それは、ローの気持ちを、考えなくていいという事。

私の気持ちが、少しでも楽になるように。

何もかも忘れられる様に。

今この時だけ、自分を利用しても構わないと言う事だ。


彼のキスは、本当に、私の頭の中をからっぽにしてくれた。

四年後、婚約、けじめ。頭の中を支配していた言葉達を、次々と消していく。

ローの手が服の中に入ってくる。下着の上から胸を触ってきた処で、再び理性のお出ましだ。

「そ、それはダメ!!絶対ダメ!!」

からっぽだった頭に、急速に思考が蘇る。
キスから先は、ダメだ。

腕を伸ばし、ローと距離をとる。
断固ダメだと、目で訴える。


「・・・わかったよ」

物分りの良い人で良かったと、一安心した所で、彼が口を開く。


「で?何があったんだ?」

「・・・・・・言わない」

「・・ったく」

それっきり、彼は詮索してこなかった。

でも、私の心は、ローのお陰ですごく落ち着き、これからの事を冷静に考えられそうな気がしていた。




明日は来るかと聞かれ、プリントを受け取った後、ローを玄関まで見送った。


「・・・#name#。」

それから彼は、いつでも傍に居ると、辛い時はいつでも呼べと、頭をひと撫でして帰っていった。


甘えちゃったな・・・

ローという存在に、私はもの凄く助けられている。

もう甘えられないな…


でも…マルコ先輩に秘密が出来てしまった。

申し訳なさに押し潰されそうになったが、何か吹っ切れた気持ちになった。

ローのお陰で答えが見つかったのだ。




部屋に戻り、ベランダに出てみた。

あと少しで、地平線に太陽が沈むところだ。

「綺麗だな・・・・」

そんな、今から地球の裏側へと旅立つ太陽を眺めながら、私は決意した。

私はマルコ先輩が好きだ。どうしようもないくらい。

四年後・・・・たとえ別れなくてはいけないんだとしても、構わない。

それまで、彼の傍に居ようと。

都合の良い女。上等じゃないかと、眠ったままの携帯へと足を進めたのだ。












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