マルコside小説 | ナノ

#29 彼の深愛



ローside




#name#の様子がおかしい。彼女は、普段通りに振る舞っているつもりだろうが…
オレには分かる。

笑顔の違和感、覇気の無さ、そして、瞳の奥に僅かに見える、哀しみと迷い。

あいつと何かあったに違いない。

オレからしたら、願ったり叶ったりだが…
#name#の哀しむ顔なんて見たくねぇ

この間、あいつに送られ登校してきた#name#に、柄にもなく、嫉妬心から嫌味を言った。

その言葉を、どうやらオレが吹っ切れたとでも勘違いしてそうだったので、否定しようとしたが…止めておいた。

そんな事を言われても、困らせるだけだ。




次の日、#name#は学校を休んだ。
それとなく理由を聞けば、家庭の事情だと。

半信半疑だったが、翌日も休んだ事により、オレは違うと確信した。

直ぐに携帯に掛けた。
#name#に電話をするのは、別れてから初めてだ。

少し戸惑ったが、居ても立ってもいられなかった。

しかし、電源が入っておらず、オレの戸惑いは空回りした訳だ。


もやもやとした気持ちのまま、隣の席ばかりに目がいっちまう。

すると、チャンスが訪れた

「あー、ナミ。これを#name#に届けてもらえないか?」

「いいけど、今日じゃないとダメなの?」

「あぁ、明日までに提出なんだよ」

明日も休むようならサイン貰ってきてくれ。
などと、後ろでされている会話に、オレは食い付いた。

「オレが行ってやるよ」

「はぁ?ダメよ!」

ダメだと言い張る彼女に、仲を裂くようなヘマはしないと説得し、オレは#name#に逢うチャンスを手に入れた訳だ。

家の場所を聞き、チャイムを鳴らす。

暫くして聞こえてきた声は、酷く困惑気味だった。

まぁ、当たり前だろう。

何しに来たんだと言う彼女に、一人であるか確認した後、提出物と言う餌をチラすかせ、扉を開けさせる。

直ぐに扉を閉めようとする彼女を押し退け、部屋へと上がり込んだ。

#name#の部屋は、かなり豪華な家具や家電が置いてあり、あいつの趣味かと、少し苛ついたオレは、嫌味を込めて部屋の感想を述べてやった。

帰る気の更々ないオレは、茶を催促し、ソファーを陣とった。

オレの予想通り、彼女は生気の抜けた面をしてやがる。

飲み物を両手に、隣に座った彼女に、直球で問いただした。

何もない。と、嘘まで付く#name#に、胸が締め付けられる。

あいつとの事で、オレに何か話すのは、彼女にとってはご法度なんだろう。

そんな事は、オレだって百も承知だ。

だが、必死に平静を装うその姿を、俯き、僅かに震えるその肩を、
オレがほっておける訳ねぇだろ。


思わず抱き締めた。

#name#の哀しみを、全て引き受けてやりたいと、

全て忘れさせてあげたいと

そして、今、この時だけでいい。
オレを求めてくれ。

糸が切れた様に泣き出す彼女を、オレは、力一杯抱き締めた。






お前が、深く沈んでいくのなら、オレも共に沈んでやる。

愛してる…#name#



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