マルコside小説 | ナノ
#26 涙の行方
![](//static.nanos.jp/upload/j/jyuira/mtr/0/0/20110915235804.gif)
婚約、四年後、ケジメ…
その単語で、私の頭の中はいっぱいだった。
ど…どう言う事なのだろう…。婚約者が居るって事で…間違いないん…だよね。
そうして、ただ足の向くまま進んでいたが、ちゃんと玄関に辿り着いていた。
このまま帰りたい。しかし、一言も言わずに帰るなんてどう考えてもダメだ。
でも…いや…
と悶々と葛藤していた所で、
「あれ?#name#ちゃん。何してんの?」と、
私にブレーキをかけてきた声。
「あ…、えっとハルタさん」
「やあ。マルコは?」
「あ、親父さまとお話してます」
「そっか、じゃぁおいでよ」
あっちに皆居るからさマルコが来るまでお話しようと、少し強引に連れていかれてしまった。
マルコ先輩が来るまで色々と話をしたが、言葉は耳を通り抜けるばかりで、
私はちゃんと笑えているだろうか…そんな事をぼんやり考えていた。
「#name#ちゃん?どこか調子悪いの?」
顔色が悪いよと言う彼に、
あ、このまま仮病を装って帰ってしまおうと、
「あ、はい。少しお腹が痛くて」と、
嘘を付いた。
「えっ!!早く言いなよ!」
医者連れてくるよ!待っててと慌てる彼に、
「大丈夫ですよ。あ、あれです…」
女の子の日なのだとニュアンスで伝えると、
「ああ、でも、薬飲んだら?ね!」と、
部屋を出ていってしまった。
大丈夫か?と兄弟の皆さんが声をかけてくれるが、苦笑いしか出てこない。
もっと愛想よくしなくてはと、意識を集中させようと思った刹那、
「#name#!!」
探したよい!と息を切らした彼が登場した。
「マルコ。彼女は具合があまり良くないらしい」
「なっ!?どうした?」
と焦る彼に、たいした事ないと、少し横になりたいので家に帰りたい。と伝えて私は無事一人になる事が出来たのだ。
傍に居ると、聞かない彼を宥めるのは本当に骨が折れた。
今は顔さえ見たくないと言うのに、私は仮病を駆使して女優並みの演技で彼を帰した。
やっと一人になれた所で、先程の会話が一気に思考を占領した。
マルコ先輩は、どういうつもりなのだろう…
四年後…彼が大学を卒業したらと言う事か。
彼からの愛情は偽りなんかじゃないと思う。
でも、彼には婚約者という決められた相手がいる。
私達の関係はタイムリミット付きという訳なのか…
こんな昼ドラの様な出来事が、まさか自分に起こるなんて…
さて、どうしよう…
マルコ先輩は、この事を私が知ったなど思いもしないだろう。
このまま私が口を閉ざしていれば、タイムリミットとともに打ち明けてくるのだろうか…
四年後か…それまで、私達が続いているかどうかも分からないか…
でも!でも、彼はどう言うつもりで私と付き合っているのだろう。
このまま順調に四年後を迎えた時、どんな顔して真実を告げてくるのだろう。
そんな事を考えていると、吐き気がしてきた。
慣れない仮病を使ったのも加担して、心と頭が悲鳴をあげている。
少し休憩しようと大きな溜め息を吐いた後、私の瞼はゆっくりと閉じていった。
眠りにつく手前で、ふと、涙が出ていない自分に、驚いていた。
本当は泣き叫びたい筈なのに…
涙の行方を探していた所で、私の意識はなくなっていた。