マルコside小説 | ナノ

#26 涙の行方



婚約、四年後、ケジメ…
その単語で、私の頭の中はいっぱいだった。

ど…どう言う事なのだろう…。婚約者が居るって事で…間違いないん…だよね。

そうして、ただ足の向くまま進んでいたが、ちゃんと玄関に辿り着いていた。

このまま帰りたい。しかし、一言も言わずに帰るなんてどう考えてもダメだ。
でも…いや…

と悶々と葛藤していた所で、

「あれ?#name#ちゃん。何してんの?」と、

私にブレーキをかけてきた声。

「あ…、えっとハルタさん」

「やあ。マルコは?」

「あ、親父さまとお話してます」

「そっか、じゃぁおいでよ」

あっちに皆居るからさマルコが来るまでお話しようと、少し強引に連れていかれてしまった。

マルコ先輩が来るまで色々と話をしたが、言葉は耳を通り抜けるばかりで、

私はちゃんと笑えているだろうか…そんな事をぼんやり考えていた。


「#name#ちゃん?どこか調子悪いの?」

顔色が悪いよと言う彼に、

あ、このまま仮病を装って帰ってしまおうと、

「あ、はい。少しお腹が痛くて」と、

嘘を付いた。


「えっ!!早く言いなよ!」

医者連れてくるよ!待っててと慌てる彼に、

「大丈夫ですよ。あ、あれです…」

女の子の日なのだとニュアンスで伝えると、

「ああ、でも、薬飲んだら?ね!」と、

部屋を出ていってしまった。

大丈夫か?と兄弟の皆さんが声をかけてくれるが、苦笑いしか出てこない。

もっと愛想よくしなくてはと、意識を集中させようと思った刹那、

「#name#!!」

探したよい!と息を切らした彼が登場した。

「マルコ。彼女は具合があまり良くないらしい」

「なっ!?どうした?」

と焦る彼に、たいした事ないと、少し横になりたいので家に帰りたい。と伝えて私は無事一人になる事が出来たのだ。


傍に居ると、聞かない彼を宥めるのは本当に骨が折れた。

今は顔さえ見たくないと言うのに、私は仮病を駆使して女優並みの演技で彼を帰した。


やっと一人になれた所で、先程の会話が一気に思考を占領した。

マルコ先輩は、どういうつもりなのだろう…

四年後…彼が大学を卒業したらと言う事か。

彼からの愛情は偽りなんかじゃないと思う。

でも、彼には婚約者という決められた相手がいる。

私達の関係はタイムリミット付きという訳なのか…

こんな昼ドラの様な出来事が、まさか自分に起こるなんて…



さて、どうしよう…

マルコ先輩は、この事を私が知ったなど思いもしないだろう。

このまま私が口を閉ざしていれば、タイムリミットとともに打ち明けてくるのだろうか…

四年後か…それまで、私達が続いているかどうかも分からないか…

でも!でも、彼はどう言うつもりで私と付き合っているのだろう。

このまま順調に四年後を迎えた時、どんな顔して真実を告げてくるのだろう。

そんな事を考えていると、吐き気がしてきた。
慣れない仮病を使ったのも加担して、心と頭が悲鳴をあげている。

少し休憩しようと大きな溜め息を吐いた後、私の瞼はゆっくりと閉じていった。




眠りにつく手前で、ふと、涙が出ていない自分に、驚いていた。
本当は泣き叫びたい筈なのに…
涙の行方を探していた所で、私の意識はなくなっていた。



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