マルコside小説 | ナノ

#25 親父さま



マルコ先輩からの、熱烈な愛情に、どっぷりと弄られ倒した一週間。

それなりに楽しかったが、
正直…身体がもたない。

それでも、四六時中一緒に居ると、新たな発見などもあって、益々、マルコ先輩への愛しさが増した。

身体を重ねると、こんなにも他人に依存してしまうんだと、少し怖くもなったが、
もう、溺れ死んでもいいくらい…彼の存在が、私の心を浸していた。




「マルコ先輩のお家ですか?」

「おぅ。兄弟達は紹介したが、親父にはまだ会ってないだろい」

彼女なんて初めてだが、オレの大切な存在を、親父にも紹介したいのだと。

突然、思い出したかの様に、彼は言い出したのだ。





そして当日。

お酒好きという親父さまの為に、マルコ先輩と選んだ秘蔵酒を手土産に、彼の家へとお邪魔する事になった。

「うわぁ!凄い大きなお家ですね…」

それは、広い敷地に、
いくつもの大きな建物が建ち並び、さながら学校の様にも見える。

知らぬ人なら、必ず迷子になるだろう、大豪邸だ。


「あぁ、1600人くらい住んでるからねい」

なんでも、社員の方達も、同じ敷地内に住んでいるのだそうだ。
そして、一際豪華な建物が、マルコ先輩達が、住んでいる母屋になるらしい…

「まず、オレの部屋に行こうかねい」と、

広い屋敷の中を、悠々と歩くマルコ先輩。

そんな彼を見ながら、

うん。この豪邸にしっかり溶け込んでいる。

と頷いていると、

「何頷いてんだい?」

おかしな子だよぃとクスクスと笑われてしまった。


彼の部屋は、
壁一面に、本がびっしりと敷き詰められ、後はベッドとソファー、大きな机が一つあると言う、塵一つ見当たらない綺麗な部屋だ。


「もう少ししたら、親父の処に行こうかねぃ」

それまでに、その緊張顔が、治るといいんだけどねぃと、気遣ってくれる。

「だって、緊張しちゃいますよ…」

いくら、マルコ先輩のお父さんだと言っても、あの有名な、白ひげ財閥の会長さんだ。
緊張しない人が居るなら見てみたい。


「大丈夫だよい。捕って食われたりしねぇよい」

「く、食われたり何て思ってないですよ」

「ククッ。物の例えだい」

そうこうしている内に、だいぶ緊張の解れた私を、もう大丈夫だろうと、腰を上げ、親父さまの部屋に向かった。


「親父!入るよい」

「し、失礼します」

「グララララ…よく来たな」

その独特な笑い声で迎えてくれた部屋の主は、立派なお髭が特徴の、威厳のある素敵な人だった。

「初めまして。#name#と申します」

ペコリとお辞儀とともに挨拶をする。


「グララララ。マルコが世話になってるそうじゃねぇか。ありがとな。」

「いえ!とんでもありません!!」

その後も、他愛のない会話をし、マルコには勿体ないなど、お世辞まで頂いて過ごしていく。

話しも一段落した所で、

「あ、#name#は先に部屋に帰っててくれ」

すぐに行くからと、彼に言われたので、親父さまに再度挨拶をして部屋を後にした。


緊張しちゃったよぉ
でも、さすがマルコ先輩のお父さん!素敵な人だったなぁと、

独り言を言いながら、長い廊下を歩いていると、

ん?マルコ先輩のお部屋って、どこだっけ?

迷子になってしまったのである。

仕方なく、元来た廊下を歩いていると、再び親父さまの部屋の前まで来てしまった。

迷路みたいだ…と、あまりに広い屋敷の感想を延べていると、
親父さまの部屋から、会話が聞こえてきた。

私が、扉をキチンと閉めなかったのかと、反省していると、何気なしに、二人の会話が聞こえてしまった。


「いい子じゃねぇか。」

「当たり前だい。初めて惚れた女だからねぃ」

「グララララ。そうとう惚れ込んでるみてぇだなぁ」

「おう。」

そんな会話を聞いてしまって、顔に熱がどんどん集まっていく。

そして、これ以上聞いちゃいけないと、部屋を探しに行こうと、足を踏み出した瞬間、我が耳を疑う言葉を聞いてしまったのだ。


「で、婚約の話はどうするつもりだぁ?」

「いや…」

「まぁ、まだ四年後の話だぁ。だが、ケジメはつけろよ。」


「…っ!!」

その言葉を聞くや否や、私の足は、玄関へと向かったのだった。





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