マルコside小説 | ナノ

#14 彼と一つに



いよいよこの日が来てしまった…

朝から落ち着かないのは…仕方がない。

日程なんて立てなきゃよかったと、後悔の嵐に襲われる。


例のホテルに向かう中、チラリとマルコ先輩に目線を向けた。
直ぐに視線に気付いた彼は、まるで遠足へ向かう子どもの様に無邪気な笑みで見つめ返してくる

「そんな強張った顔すんなよい」

ここで食べちまうよいと、余裕たっぷりな処が堪らなく彼らしい。

冗談なのは百も承知だが、過剰反応してしまうのも…多目に見てほしい。


「て、天気よくて良かったですね」

「ククッ緊張しすぎだよい」

「…!!」


自分の余裕の無さに失望してしまう。


そんな強張った私を引き連れ、無事ホテルに着きなにくわぬ顔で部屋に向う彼。
この部屋に足を踏み入れるのは二回目だが、何度見ても豪華で素敵だ。

明らかに場違いな部屋に、恐縮していた私を後ろから包み込むように抱き締めてきた彼に、不安な気持ちを追い払い、全て任せようと心に決めて腕を絡ませた。

そのまま、マルコ先輩の事だから何かしてくると思ったが…次は散歩だよいと、手を取り入り口へ向かう。


次は?と、少し疑問に思ったが、今日は全て任せると決めたばかりなので素直に従った。


そんな彼と、あの日の様に砂浜を歩く。

あの時とは違う、私達の関係。まさか、恋人になって再びこの場所に来るなんて夢にも思わなかった。


だいぶ心に余裕がでてきた私は、会話の合間合間にキスをしてくるマルコ先輩に頭を預け寄り添った。

「甘えた#name#も可愛いねぃ」

ご機嫌隠すことなく肩を抱き寄せてくる彼は、再びキスの雨を降らせてくる。


「さ、次は飯食いに行くよい」


また、次はだ。

何だか発言がおかしな気がしないでもないが、やはり素直についていく。


食事はとても美味しかった。私の好きな物ばかりで、彼の気遣いだと心が温かくなる。

そしてデザートは、私の大好きな店のショコラケーキ。
抜かりないマルコ先輩の配慮に感激だ。

そんな彼に頬が緩みながらも、頂きますと最初の一口を口に運ぼうとした刹那…


「ハハハハハハ!!!」


と、直ぐ近くで幾つもの声が重なった。


その瞬間、綻んでいたマルコ先輩の顔は般若の様に変身を遂げ声のした方へ一直線に向かって行く。


彼が辿り着いたと同時に聞こえる、怒鳴り声、そして、幾つもの叫び声と話し声…

知り合いが居合わせたのかと、そちらに目をやると、何人もの男の人がマルコ先輩によって蹴とばされていた…

それから現れた人達は、皆、マルコ先輩の兄弟だと説明され、自己紹介と軽く挨拶を交わした。

それにしてもたくさんいるなぁと、名前を覚えるのが一苦労だなと思っている私を他所に、なにやらマルコ先輩が声を振るわせ慌てている。

紙がどうのこうの言っていたが、よく意味が分からなかったのでスルーしておく事にした。

少しドメスティックが酷い気もしないではないが、仲が良さそうで素敵な兄弟さん達だ

それにしても、何故ここに居るのだろうと思ったが、彼の様子からすると、からかい材料にでもされたんだろうと一人納得する。



暫く会話を交わした後、マルコ先輩に引きずられる様にして部屋に戻った。


「悪かったねぃ」

うるさかっただろいと、申し訳なさそうに謝ってきたが、凄く楽しかったと、会えて嬉しかったと、今度はゆっくり紹介して下さいと伝える。


そして、別々にお風呂に入り(一緒にと言われたが、猛烈にお断りした)今は、ソファーに腰掛けシャンパンを頂いている。


「あんまり飲むとダメだよい」

酔っぱらったら困るからねぃと、何とも厭らしい目付きで言ってくるマルコ先輩

「どうせなら、ベロベロに酔いたいです」

と漏らせば、バカ言うなよいと近付いてくる唇。

いつものキスと何ら変わらないのに、これから起こる行為に無意識に身体が強張る。

それでも彼は、着々と事を進めていきベットに移動させられ、

「大丈夫だよぃ…愛してる」

と、それは優しく、もう、ほんとに優しく抱いてくれたのだ。

途中、何度か突っ込みを入れたくなったが…今は、止めておこうと心にしまった


こうして私達は、心も身体も一つになる事ができ、
私は彼の溢れんばかりの愛情で胸が一杯になったのだ





「ん、そう言えば、さっき紙がどうのこうのって…何の事ですか?」

「…#name#は知らなくていいよぃ。一生な。」

「え…一生ですか…?」

「あぁ、一生だい。」




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