愛した彼女は不透明 | ナノ

09 最愛の存在 LAW視点



俺には目に入れても痛くない程可愛がり大切に思っている妹がいる。それはそれは従順で素直で可愛い妹だ。正直一度だけ目に入れた事もある。あれは痛かった。二度としないだろう。

幼い頃に両親を事故で亡くし祖父母の家で育った俺達は、とても仲が良く片時も離れず生活をしてきた。幸い病院を経営している祖父母宅は世間で云う裕福な家庭で、しかも絵に描いたように二人とも優しく自慢の祖父母だった。両親はいなくともそれなりに幸せな暮らしを送る中、何の因果か妹が小学五年の時、またもや俺達は最愛の存在を事故で亡くしてしまう。

そんなベタ過ぎるドラマの様な話だがこれが実際に突き付けられた俺達の現実で、まだ大人になりきってなかった俺にもかなり堪えたがそれ以上に妹はこの世の終わりの様な顔をしていた。

そんな妹を見せられては落ち込む暇などなく、唯一の肉親でこの先俺しか頼りのない妹を励まし支えながら、将来はこの病院を継いでくれと言っていた祖父の遺言通り寝る間も惜しみ医学を学び、妹を立派に育て上げるという目標を生き甲斐に生きてきたようなものだ。

そしてそんな妹には思い付く限りの教育を施してきた。変な虫が付かぬよう有名な女学校に通わせ、要らぬ知識を植え付けない為にもテレビは観る番組を規制し様々な習い事をさせ、どこに出しても恥をかかぬよう身形は足の先から頭の天辺まで全て俺が選び与えていた。妹の個性を摘んでしまわぬかとも悩んだが、俺が選び与えた物を身に付けた妹はそれはそれは嬉しそうに微笑むのだから俺の選択は間違ってはいない筈だ。

大学を卒業し社会人になってからも目の届く病院内の事務に就かせ傍に置いた。それでもいつかは嫁に出す身、兄離れとまではいかないが一人暮らしくらい経験させておこうと住む場所は別にしておいたが、それでもどこか抜けている妹が心配で俺は隣の部屋に住んでいる。

そんな俺だが、別に妹に対してやましい感情は一度も抱いたことはない。独り占めしたいなんて独占欲なんてものも持ち合わせていないし恋をすれば応援だって相談にだって乗ってやる。

どこの馬の骨ともわからぬ男だろうが、俺は安心して応援する事が出来るのには理由があった。その理由とは妹は並みならぬ嗅覚を兼ね備えているからだ。

第六感とも言うべきか、妹が好きになる奴はなんでも心が綺麗なやつばかりだそうだ。それを実証出来る出来事は今までに多々あったが、まぁ、妹が好きだと言っている内はその相手には何の問題もなく安心して任せられる相手ということだと俺は確信している。

そんな妹が最近新たな恋をしたらしい。俺より歳上でなんでも美味い魚を食わせる店で働いている男だと。


「部屋着が欲しいだと?」

「はい!マルコさんが部屋着持ってこいって!こう部屋で寛ぐ服だそうです」

「美味い魚を食わせる店の男がそう言ったのか?」

「はい!」

「そうか…部屋着か…。よしわかった。明日にでも買いに行くか?」

「はい!ありがとうございますロー先生!」

「おい#name#、家では先生と呼ぶな、あと敬語も」

「へへ、癖なんだもん」

日曜の深夜近く、二泊三日のお泊まりを終え帰ってきた妹は目をキラキラさせて部屋着とやらが欲しいのだと部屋に駆け込んできた。

その様子に順調そうだなと笑みを漏らしながら頭を捻る。部屋着か。俺達は正直部屋着というものを着ない主義だ。部屋では大抵真っ裸が基本で必要であればガウンを羽織る程度。そもそも部屋着を着る習慣が全くない。

それでも欲しいのだとアザラシの子どもの様な瞳でお願いされれば買わない訳にもいかないだろう。

そうして早速次の日、#name#の仕事が終わる時間を見計らい買い物へと繰り出した。

「ロー先生これが部屋着?」

「あぁ。これを外で着ているやつを見た事あるか?これは間違いなく部屋着だ。それと先生はやめろ」

「あ、へへ、ごめん。でも…スケスケだよ?これ」

「部屋着なんだから透けてても構わないだろ、それに#name#によく似合う」

「そっか…へへ、マルコさんに早く見せたいな」

「あぁ。きっとそいつも喜ぶと思うぞ」

それは本当に#name#によく似合っていた。淡い色合いの生地で繊細なレースが絶妙なバランスで織り込まれ作られたそれをデザイン違いで何着か購入し、更に歳上男が好みそうな下着を数枚新調した。 きっと世界中探してもこうも#name#を引き立たせるコーディネートが出来るやつは俺しかいないだろう。

そうして部屋着とやらが入った紙袋を幸せそうな顔で大事に抱えて歩く#name#を見ていると、何だかこちらまで幸せな気分になってくる。是非とも長続きしてもらいたいものだ。

そしてずっと頭の片隅に居座っている#name#に聞かされたあの言葉が蘇る。本当にその店は美味い魚を食わせてくれるのか?未だニコニコ顔で隣を歩く#name#を横目に近々その男の顔見も兼ねて店に行ってみようと秘かに考えていた。

本当に美味いのだろうか…

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