愛した彼女は不透明 | ナノ

08 幸せの登り坂



あまりにも鬱陶しい同僚達の黄色い声にうんざりした俺は、まともに#name#を紹介することなく逃げるように店を後にした。
まぁ、機会があればまた改めて紹介するとして、今は急速に芽生えてしまったこの煩い心臓をどうにかしなければならない。

気持ちを認めたのはいいが、この歳になって改めて形式張った告白をするというのもなにか照れ臭いし面倒臭い。

かといって何も伝えず曖昧な関係を続けた挙げ句、気付けば離れていっちまったなんてのも御免だ。

ならばやはり恥など捨てて伝えるべきなのか?それでもし振られたら究極にカッコ悪くないか?いや、鈍臭そうな#name#の事だ。告白された事に気付かないかもしれない。ヘラッと笑って流される可能性だってーーー

「の…あの…マルコさん?具合でも悪いんですか?」

「あ?あー…いや…大丈夫だよい」

「そう…ですか、大丈夫なら良かったです!」

「あぁ…先に入れよい」

目まぐるしく飛び交う思考に頭半分持ってかれていた俺は、#name#の呼び掛けに一気に現実へと引き戻され気付けば既に目の前は自宅の扉だった事に驚く。

恐らくここへ着くまでろくな会話もしてこなかった筈で、そんな俺に不安そうな眼差しを向ける#name#に悪いと内心謝りながらもやはり心は落ち着く筈もなく未だ不安定にぐらついていた。

「……、あー、そういや人見知りする方だったのかい?」

「へ?あぁ…、人見知りって言うか…なんでしょう…好き嫌いというか…失礼でしたよね、すみません」

「いやそれは問題ねぇけどよい…好き嫌い?」

「あ、いえ、そのマルコさんのお仲間さん達が嫌いという訳じゃなくて…えーっと、好きな人以外はいつもこうなんです」

「…好きな…人?」

「はい!あ、でも馴れたらまだ話せるようにはなるんですけど、緊張はしますね、へへ」

「す、好きな人以外っつうのはよい、その…なんだ…俺は…」

「マルコさんですか?好きな人ですよ、マルコさんは大好きです」

「っっ!!」

リビングへと足を進める#name#の後を追いながら何か会話をと取り繕った問いに返ってきた言葉は、今現在、絶賛悩ませ中の問題を魔法のように消し去る威力を秘めていた。

#name#の口にした好きが俺の思っている色とは違かろうがそれはもう何のストッパーにもならず、この少し甘い空気が流れる今こそ最大のチャンスだと、一度ゆっくりと息を吐き出しグッと腹に力を入れる。

「#name#」

「はい」

「……………俺の事、好きかい?」

「はい!大好きです!」

「そ、そうかい…あー…俺も…好きだよい」

「マルコさん…嬉しいです〜」

「ぅおっ、お、おう」

勘違いされないよう愛の言葉の部分だけは、真剣に、それでいて少し艶を帯びた眼差しで真っ直ぐ目を見て想いを告げた。

その言葉を聞いた途端、堪らなく嬉しそうに抱き着いてきた#name#の瞳は少し潤んでいて、その様子に伝えた想いを履き違える事なくそして受け入れてくれたのだと感じた俺は、何とも言えない幸福感と、それでいて順調過ぎる己の恋愛事情に背筋がゾワリと震え不安が顔を出すのを感じたが、あまりにも喜びを露にする腕の中の存在が直ぐ様その不安を幸福に塗り替えてくれる。

それからペットリと絡み付き離れようとしない#name#と極自然に唇を重ね、これまた当然の様に身体を重ねてしまった。

人並みの羞恥を持ち合わせていない彼女がどんな風に抱かれるのかと変な期待を秘かに抱え事に及んだが、どこかにスイッチでもあるのか今までの#name#では想像が付かない程色っぽくそれなりに恥じらい、そして過去に抱いたどの女よりも綺麗に見えてそのギャップが更に心を鷲掴みにした。

軽い付き合いをするつもりじゃなかったが、こうもトントン拍子に事が進むのは恐らく#name#が何の駆引きもせず真っ直ぐに感情をぶつけてくるからに違いない。

そんな彼女に要らぬ羞恥や見栄に意地なんてもんは無用だと、まっさらな心で向き合えばあっという間に体の隅々まで#name#で埋め尽くされてしまった。

その急速さに驚かずにはいられなかったが、これが恋愛だったなと忘れていた過去の記憶を呼び起こし彼女とのこれからに胸が踊るのを感じていた。

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