短編or番外編 | ナノ


05 バナナの邪魔者


「お疲れ様です」

「お!#name#ちゃん聞いたぜ?昨日マルコん家に泊まったんだって?」

「っっ!?あ、あれは…その……ちょっとバナナ!何言いふらかしてんのよ!」

「あ?本当の事だろい?こっちは見たくもねぇ裸見せられていい迷惑だよい」

「なになに!?お前裸ってまさか」

「あぁ。こいついっちょ前に誘ってきやがってよい」

「ちょいちょい!!紛らわしい言い方するな糞バナナ!!」

「あんだと貧乳!事実だろい。服が皺になるだのブラが苦しいだの俺に脱がせっつったのは紛れもなくお前だよい」

「絶対言ってない!!…妄想もそこまでくると痛いわね」

「……喧嘩売ってんのかい」

「まぁまぁまぁ…」

出勤そうそうニタリと話し掛けてきたサッチさんの言葉に慌てふためきながら、何とも口の軽いバナナに睨みを利かす。

しかし実際あのTシャツの下は何も着けておらず、自分で脱いだのかバナナのいう通り脱がしてもらったのか全く記憶がない。

だが記憶がないにしろだ。あのバナナに見られたなんて一生の不覚だ。

「はぁ…最悪だぁ…」

「…そりゃこっちだよい。まぁいいじゃねぇかい、貧乳でも乳は乳だよい」

「うるさいっ!!貧乳言うな!!」

「お前らもういいから開店準備しろよ…」

「おら貧乳!さっさと働けよい」

「…バナナもね」

最悪最悪と、貧乳を連呼するバナナを見る度呪文の如く呟き仕事をこなすこと数時間。ちょうど通り掛かった席から伸びてきた腕に掴まれ驚きの眼差しを向ければ、そこには懐かしい面子が目に飛び込んできた。

「やっぱり#name#じゃねぇか。久しぶりだな、元気にしてたか?」

「うん!キッドこそ元気?相変わらず派手な頭だね」

「クククッ…」

「笑うなトラファルガー。あ、こいつ地元の同級生でよ、#name#だ」

「あ、初めまして」

「ククッ、あぁ、トラファルガー・ローだ。よろしくな」

「はぁ…かっこいい。モデルさんか何かですか?」

「いや、違うが…」

「#name#止めとけ、こいつはタラシだ。ろくな男じゃねぇ」

「わ、キッドに言われたくないですよね?トラ…」

「トラファルガーだ。あぁ、確かにこいつにだけは言われたくねぇな」

「ですよねー?」


そんな偶然の再会に加えなんとイケメンにまで巡り逢えた私は、前日の悪夢を乗り越えたご褒美のようなこの出逢いにニマニマとだらしない顔を惜しみ無く晒け出していた。

「なんだいそのアホ面はよい…」

「え?あぁこれ?これは…うふふ」

「気持ち悪ぃよい。なんだい?」

「いやさ、フフ…アドレス聞かれちゃったの!後でワンギリしてくれるんだって。いやぁ…生きてて良かった」

「………どの席の奴だい?その物好きはよい」

「えー?あっと、あそこのイケメン!イケメンよイケメン!赤い方じゃないからね!」

「………チッ。物好きもいるもんだよい」

「フフン、僻むなバナナ王子」


バナナの舌打ちさえも祝福の鐘に聴こえる程舞い上がるだけ舞い上がった心は、先程までのどす黒く濁った心境を一瞬で消し去り今やお花畑をスキップしているかのような爽快さで満たされていたのだった。

「終わったら速攻登録しなきゃ」

「………」







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