短編or番外編 | ナノ


03 バナナはストーカー


過剰に期待し過ぎたのかイケメンなど人っ子一人も見当たらず、そのあまりにも期待外れなメンツに当然話しなど弾む筈もなく、少し自棄になった頭は次々とアルコールへと手が伸びた結果、家へと向かう足取りは実におぼつかないでいた。

一次会で早々と退散し何の嫌がらせだと愚痴を溢しよろよろと歩く事数分。駅から自宅までは徒歩十分も掛からない筈だったが、もうかれこれ三十分は歩いてる気がしてならない。

「はぁ…家はどこだぁ…」

「お前アホだろい?」

「は?…ってまたバナナ…なにしてんの?」

「バナナじゃねぇ…。…ふらふら歩いてるアホ女が目に入ってよい、観察してたんだい」

「……ストーカーですか?」

「関節技きめてやろうかい?あん?」

「むりむり!今そんなんされたら…吐く!絶対吐く!」

「ふん。ほら、さっさと立てよい」

「……いや、ちょっと休憩をちょっ吐くって!な、なにっ!?」

「少し黙れよい!アホブタ女!放り投げるぞい」

歩くのを中断し路地に座り込んだ途端現れた神出鬼没過ぎるバナナに驚きながらも、路頭に迷っていた頭は少しだけホッとしていた。

そんな私を相変わらず極悪面のまま貶しながら、何をトチ狂ったのかヒョイと横抱きに抱え歩き出すバナナに恐怖と驚きの声をあげるも噛み付くような威嚇に瞬時に竦み上がる。

「お姫様抱っことか怖いんですけど」

「…逆さに抱えてやろうかい?」

「ぇ…それは嫌。っていうか…なにしてんの?」

「…合コンは?えらく帰りが早かったねい」

「あ…うん、期待外れで…ねぇ、だからなにしてんのってば?」

「…はぁ。ちょいと黙れよい。重てぇんだからよい」

「…じゃぁ抱っこなんかしなきゃいいのに」

「あ?」

「っ、…あー、眠たい」

「………寝るなよい?」

「………」

「…………おい」

「………………」

「寝たのかい?…ったくよい…アホ#name#が」

バナナに抱っこは非常に頂けなかったが、これ以上口を開けば本気で逆さ吊るしになりそうな予感がした私は防衛反応を発動し大人しく口を結んだ。

寝た振りを決め込もうと無理やり瞼を閉じれば、意外にも心地よい揺れに直ぐさま意識は朦朧と霞んでいく。

だんだんと薄れ行く意識の中頭上から溜息に混じりになにか聞こえた気がしたが、反抗する間も気力もないまま私は夢の中へと旅立ってしまっていた。







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