短編or番外編 | ナノ


02 バナナは暇人


見事休みを獲得した私は、勝負服に身を包み自宅から駅へと続く道のりを鼻唄混じりに歩いていた。

普段は着ない清楚なイメージのふわりとしたワンピースに、ないとは思うがもしもの為に下ろし立ての勝負下着まで身に付け抜かりはない。

友人いわく、相当なイケメンが揃うらしい今夜の合コンは、その話を持ち掛けられた瞬間から運命の出逢いが訪れるような気がしてならなかった。

必ずやいい男とお近づきになってやると、野心と期待が入り交じる心中で最寄りの駅に到着すれば、そこには思わず背を向けたくなる人物がおり瞬時に眉間に皺が寄った。

「なに嫌そうな顔してんだよい、クソ女」

「…別に、休みの日まで見たくない顔だなあと思って」

「はん、そりゃこっちの台詞だい」

「…で?何してるの?こんなとこで?」

「別に…」

「わぁ…可哀想…暇なんだ」

「あ?ふん、なんだい?チャラチャラした格好しやがって、ナンパでもしにいくのかい?」

「チャラチャラ…ナンパじゃないし!合コンだし!って、ねぇ…変かな?」

「合コ…、あぁ、全く似合ってねぇよい」

「うそっ!?やっぱりあっちにすればよかったかな…今から着替えに」

「行くのかい?…合コン」

「…は?え?なに?」

「チッ…何時に終わるんだい?」

「は?分かんないよ、そんなの。なんで?」

「別に…なんでもねぇよい」

「…なに?あ、もう時間!じゃぁね、ってか暇ならバイト変わってくれたらよかったのに!ケチケチバナナー!!」

「あっおいっ……チッ」

似合ってないと言われ少し不安になったがバナナの意見だ。さして参考にはならないだろうと、気持ちを切り替え時計を見れば待ち合わせ時間が迫っている。

バナナの所為で大事な合コンに遅れるわけにはいかないと、バツが悪そうな顔で意味のわからぬ言葉を紡ぐバナナに嫌味を吐き捨て改札口へと駆け出した。

背後で呼び止める声が聞こえたが、それどころじゃないと振り向きもせず電車に飛び乗り一息吐けば、ふとバナナの顔が脳裏に浮かび上がる。

あんな顔初めて見たなと、気まずそうに伏せた目線に少しだけ胸に引っ掛かるものが生まれたが、まぁバナナのことだ。特に意味はないだろうと開き直った頭は再びまだ見ぬイケメンへと切り替わっていた。







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