短編or番外編 | ナノ


涙が枯れた頃


リクエストが御座いましたので、マルコsideのエンディングを書かせていただきました(´ω`)マルコ、チョット暗すぎです(汗)会話文殆どアリマセン。



完璧に誤解しているだろう彼女にどうしても連絡を取りたくて、気付けばオレは、自分でも引くくらい何度も電話を掛けていた。

しかし何度掛けようと、メールをしようと、彼女からの応答はなくーーー
その日、オレは一睡も出来なかった。

だが同時に気付く。オレに女の影があった事で部屋を飛び出し避けられているのならば、やはり彼女もオレを意識してくれていたという事か?

ならば尚更だ。尚更早く誤解を解きたい。


想いとは裏腹に、次の日もやはり彼女とは連絡は取れなかった。唯一の頼み綱の会社でさえ、避けられる始末だ。

しかし落ち込んでばかりはいられない。親父の件で、社員にはかなりの心配と迷惑をかけている。
そんなオレが、また気落ちした態度を見せる訳にはいかないのだ。

気丈に振る舞いながらもやはり心中穏やかでないオレは、暇さえあれば彼女の事を想い、そして電話を手にしていた。


そんな#name#への想いで押し潰されそうなオレは、案の定食欲もなく、#name#のお陰で回復に向かっていた心と体は、また急降下を始める。


「お前…大丈夫かよ?顔色悪いぜ?」

「…そうかい?」

「っ…一人で背負うなよ、オレ逹がいるんだからよっ」

「あぁ…分かってるよい」

ガキの頃から共に育ち、親父に任されたこの会社を共に支えているサッチに、心底心配した様子で問い掛けられる。

奴には彼女の事は話していない。別に隠すつもりもないのだが、今の切羽詰まった状況では、何から話していいのか検討もつかなかった。

そしてその日も連絡が取れず仕舞いで帰宅したオレは、部屋に入るなり一気に空虚感が襲ってきた。

あんな事さえなければ、今、この時、この部屋には、彼女が居て温かな食事を作り笑顔でオレを出迎えてくれていただろう。

そうしてふと目に入った、昨夜のまま手付かずな彼女の手料理。

そっと鍋の蓋を開ければ、溜まった水蒸気がポタポタとオレの代わりに泣いているようだった。

そうして、もしかしたらこれが彼女の作る最後の料理かと思うと、食べてしまう事も、ましてや捨てる事もオレには出来る筈がなかったのだ。


連絡の取れない憂鬱な日々は続いた。
そんな中食欲は当然無いに等しいのだが、酒だけは面白いように喉を通った。
飲むに連れてぼんやりとする思考。
その浮遊感みたいなもんが、今のオレには唯一の癒しだったのだ。


当然酒ばかり飲んでりゃ体調は悪くなる一方で、彼女と連絡が断って五日目の夜、見るに見かねたサッチに無理矢理飯屋に連れていかれた。

「ちゃんと食えよ、自己管理も出来ねぇ奴が人の上に立つ資格ねぇぞ?」

「あぁ…そうだねぃ」

「ったく、ほら、食え」

「…わかったよい」


目の前に差し出された料理を見ても、食欲は全くわかなかった。

一口、仕方なしに口に入れたオレは、それと同時に彼女の事が一気に蘇る。

この店はかなりの高級店だ。しかしどんなに高い料理だろうと、絶品だと有名な料理だろうと、オレには彼女の作った料理を越えられるものはなかった。

結局一口程度しか口にせずに店を出た。あまりにも気落ちし過ぎているオレに、少し休養しろと、明日から三日程仕事を休めと強制される。
確かに奴に任せておけば大丈夫だろう。オレはサッチに小さな謝罪と大きな感謝をし、またあの空虚な空間へと帰ったのだ。


家に居てもする事なんて何も無かった。クリーニングに出すのも面倒で、ましてや片付けるなんて気力も無い。#name#が綺麗に片付けてくれていた部屋は、見るも無残に汚れていった。

部屋中を鼻を突く匂いが充満している事に気付いたのは六日目の朝。
その原因を見つけたオレは、まるで無力なオレの代償かのようなそれに愛着さえ湧いてしまった。臭いのは頂けないが、何故か今のオレには捨てる勇気がない。
このままでは最悪の事態になりそうだったが、もう少し、後もう少しだけこのままにしておこうと再び蓋をした。


散らかった悪臭漂う部屋で、オレは深い溜め息と共に目を瞑る。

なぁ、親父。オレはこんなに弱い奴だったかねい?

今は問い掛けても返事の帰って来ない、最愛の存在に語りかける。どうも親父を失ってから、どこか心の軸がずれちまったみたいだ。

そうして、再び失いかけている大事な存在に少し戸惑った。家族以外こんなに他人に執着した事はなかった事。しかも女にだ。まるで親父と同等の寂しさを伴うこの気持ちに、どう対処していいのかーーーそして思った。やはり彼女は親父からの贈り物じゃないのかと。それならば納得がいく。この短期間でこうも気持ちが揺さぶられる事に。


そんな彼女と連絡のとれない日々が続いた七日目の朝。
もういい加減にしなければと自分に言い聞かせる。こんな生活を続けていても何も得るものはない。

しかし頭では理解できても、どうしても最後の決断が出来ずにいたオレは、今日もぼんやりと携帯を眺め溜め息三昧だ。


昼になり、ビールでも飲もうと腰を上げた刹那、鳴り響く電子音に気だるそうに手を伸ばした。そうして目にした画面にオレの鼓動は急速に高鳴ったのだ。
もしかしたら今、そこに彼女が来ているかもしれない。いや、必ず居る。
オレは形振り構わず玄関の戸を開け飛び出した。

逢いたい。逢って誤解を解きこの想いを伝えたい。

先程まで諦めようとしていた気持ちなんてどこかへ行ってしまった。エントランスを潜れば、背を向け歩き出そうとしている彼女が目に飛び込んできた。

咄嗟に名を呼び呼び止めるも、まるで拒絶する様に走り出す彼女。

ここで見失ったら最後だろう。そう感じたオレは全力で追い掛け、彼女の白く細い手首を捕まえる事が出来た。

力任せに引き寄せしっかりと肩を抱く。彼女は俯いて此方を見ようともしなかったが、オレは動揺する心でなんとか言葉を繋いだ。

そうしてあの日の誤解を解こうとした時だ。彼女の肩がふるふると震えだす。
泣いているのかと顔を覗こうとした瞬間、今の状況では有り得ない笑い声が耳を襲った。

聞けばオレの靴が互い違いだと。かなり恥ずかしかったが仕方がないと開き直った。
それからやせ過ぎだのなんだのと、非難めいた言葉を口にする彼女を連れ部屋へ戻れば、今度は汚いだの臭いだのと騒ぎ出す。
それも仕方がない。もう今のオレは開き直るしか手段が浮かばなかった。


やっと彼女を捕まえる事ができたオレは、自分でも驚くほど沈んでいた心が浮いてくるのを感じていた。
彼女が傍に居るだけで、こんなにも気持ちが温かくなる。愛おしい。心の底からそう感じた。


あの日の誤解が解けた所で、オレはなんの戸惑いもなくまた彼女に飯を作ってくれと問い掛ける。断られようが何度でも言うつもりだった。
恥じる事だが、オレは#name#が居ないとどうも生きて行けなさそうだ。


想いを告げた後、戸惑いながらも自分も同じ気持ちだったと告げる彼女に、もう離してあげれそうにないと思った。これから先、一生だ。

精一杯の気持ちを込めて彼女にプロポーズをした。確かに唐突過ぎだが、オレの気持ちは確かなもので、決して偽りなんかでもこの雰囲気に流されたものでもない。

オレの誠意が伝わったのか、恥ずかしそうに頷く彼女に更に想いが募っていく。

オレ達の関係は始まったばかりだが、何の不安もなかった。
必ず幸せになれると、そして幸せにしてやるという自信があったからだ。


そんな幸せな生活の中、今日も彼女を抱き締め眠りに就く。そして久し振りに夢を見た。親父の夢だ。

言葉はなかったが、その顔はとても優しく、穏やかに【これで安心して眠れるぜ】と言っている様だった。


目が覚め夢だと気付いてから、オレは空に向かって思いを告げた。

親父。こんな素敵な贈り物をありがとよい。オレはもう大丈夫だ。だから、安心して眠ってくれ。








そうして最高の贈り物を貰ってから2年後。今度はオレ達 "二人" に最高の贈り物が届いたのだった。


「ぁ…マルコさんそっくり…」

「何だい?その嫌そうな顔は…」

「ぇっ!?そ、そんな事ないですよっ! ほらぁーパパでちゅよ?」

「……オレに似て可愛いよい」






こんな感じで締めてみました(θжθ)
リクエスト頂いたお嬢様!ありがとうございましたm(__)m

でもコンナンですみません(汗)
でゎ失礼致します







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