私の中の優先順位 | ナノ

25 私の中の優先順位



やっと判明した心のモヤが消え去った開放感は、面白いくらいアルコールを胃に運び入れ今までで感じたことのない高揚感で全身を隅々まで満たしてくれた結果、まさに上機嫌としか言いようがない私を作り上げてしまった。


そんな身軽になった体は当然ながら羽目を大いに外してしまう訳で、結局その暴走は身体が限界だと訴え出した朝日が顔を見せだす早朝まで継続し、ぐだぐたなお開きを交わし家路へと辿り着いた頃には、まるで電池が切れる寸前のおもちゃの様に一時停止を繰り返す何とも怪しい人物を完成させていた。


「はぁ……きっつ…っ!?ぅ、」

無意識に零した感情に疲労感が倍増したような錯覚に陥りながら、恐らくまだ寝ているだろうマルコさんを配慮して音も立てず玄関に足を踏み入れた途端、酔った頭と気だるい体を一瞬で消し去ってしまう光景に胃の中身がせり上がってきそうになる。


「はぁ…あぶな。って、何でこんなとこで寝てんの!?ちょ、マルコさん!?」

「ん……ぁー、#name#…#name#!!」

「わっ、寝惚けないでよ、何してんのよまったく」

「帰ってこないかと思ったよい……」

「はぁ?……、連絡してたでしょ、もう。ほら、ベッドいこ?」

「……よい」

扉を開ければ厭でも目に入る玄関のど真ん中。そんなあから様に見付けてくれと言わんばかりの場所に横たわり眠るマルコさんに当然ながら飛び出した驚愕の声。

思わず駆け寄り呼び掛ければ、ゆっくりと開く瞼が私を捉えた途端泣き出しそうな勢いで飛び付いてきた。

予想だにしなかったその光景と彼の態度を前に、昨日までの私なら確実にドン引きしていだだろうと思い返しながら、今ではそんな鬱陶しさが愛しくて堪らない。

無意識に纏っていた分厚くて重たい鎧を脱ぎ捨てた今、笑えるくらい素直に気持ちが溢れてくる。

自分を苦しめる下らない体面を守っていた事に自嘲しながら、絡み付くように離れないマルコさんを優しくベッドへ沈ませ滲み出る愛情を込め掛け布団に手を伸ばした。


「まだ起きる時間じゃないでしょ?寝てて?」

「っつ!?」

「ぷっ、何その顔っ」

「#name#が…優しい…よい」

「フフフ、あー、そうかもね、フフ」

「ね、熱でも…あるのかい?」

「え?ないない、あ、うん、そだね、ちゃんと言っとこうかな」

「なっ……何を…だい?」

「フフ、おかし。そんな構えないでよ、別れ話じゃないから」

「お、おう…」


自分でも違和感を感じるくらい優しい言葉を掛けた途端、信じられないとでも云うように見開かれた双眸に思わず笑いが零れた。

そして寝惚けた頭でも瞬時に感じ取ったのだろうこの違和感ありありな私が繋ぐ次の言葉に、今度は顔を強張らせ身構えられれば、もう抱えていた色々な想いを彼に伝えなければと感じてしまう。

そんなかなり勘違いをしている彼に苦笑いを含ませ、少しでもこの想いが彼に届けばと、ゆっくり、言葉を探しながら頭の中の想いを口にしていった。


「あのね、昨日ちょっとした切っ掛けで気付いたの」

「……お、おう」

「私、皆にお金が目当てでマルコさんと付き合ってるって…思われたくなかったみたいで…、さ」

「………」

「それでね、勝手な思い込みなんだけど…マルコさんに気持ちを口にするのも、それを行動で表すのも、それをしたら…なんか自分を正当化するだけの戯言としか見られない気がしてて…、ね」

「………#name#」

「つまりね、んー、あれよ、自分に正直になる事にしたの」

「正……直…」

「そう。だからね、……マルコさん」

「っ、よい」

「………好き。大好き」

「っっっ!!!!!!」

「あーすっきりした!さ、お風呂入ってくるね、………ぇ?ちょっと、大丈夫?」

「……………」

「もしもーし?」

「………………」

「………………」

「………………」

「………、お風呂…入ってきまーす…」



想いを告げた途端何故か物の見事に石化してしまったマルコさんに正直、困惑を通り越して呆れた感情が湧き上がりながら、埒の明かないこの状況に直ぐ様見切りを付けその場をゆっくりと離れた。

そんなに固まる程の衝撃だったのかと、共に過ごす中で確かにデレリとした覚えはなかったが、それでも当然の様に身体を重ねていたし何より毛嫌いする様な態度をした覚えはないのになと首を捻る。

しかしあの様子からすると、彼の目に映っていた私は間違いなく愛の言葉を吐くような可愛らしい女には見えていなかったのだろうと推測し思わず頬が引き吊った。

これからはもっと甘えようーーー

そんな課題を無理矢理頭に捩じ込みながら、やけに遠回りした自分の気持ちに笑える程大きな溜息が漏れる。

今まで頑なに拒んできた客との交際も、あんな短期間ですんなりと受け入れ同棲までしているこの事実も


きっとそれはマルコさんだったからーーー


そう想わずにはいられない程、尽く私の今までを覆していった彼に柄にもなく運命を感じてしまう。



彼にいつから惹かれていたのかとか、何で彼なのかとか、そんな少し難題な答えを探しながら熱いシャワーを被れば身体の疲労感が和らいでいくのを感じる。

その気持ちよさにうっとりしながら目を瞑れば、今ではしっかりと優先順位のトップに君臨するマルコさんが直ぐ様脳裏に浮かび上がった。


理屈じゃなく突然湧き出した様に溢れてくるこの気持ちに愛しさを感じながら、ただ、シンプルに好きなんだと想える相手に出逢えた今の自分に幸せが込み上げる。

そしてお風呂から上がった頃には石化が解けているだろう彼に、もう一度、今までの想いも含めこの愛しさを伝えてみようと、再び脳裏に姿を表したマルコさんに胸が心地よい高鳴りを響かせていた。






「マルコさ……うそっ!?まだ固まってんの!?」

「……………」

「ちょっといい加減しっかりしてよ!!」

「………………」

「はぁ……、………、あーぁ、なんか別れたくなっちゃった」

「っよい!?」

「ぷっ、冗談よ、冗談」

「っっっっ!?」




おしまい


▼あとがき
はい、すみません。こんなふざけたうんこな終わり方しか思い付きませんでしたゴメンナサイm(__)m

完結を書く前に取り敢えず初めから読み返したんですがまぁ!意味が分からぬこの話の流れ(´Д`)
現金な女どこいった!?からいつの間にマルコを気になり出した!?タイトル意味あんのか!?やらまぁ〜話がとびとびなうんこでしたね、本当に申し訳ない(θжθ)

そしてマルコの素性に触れてませんよね、もっさ大したことない素性なんですが番外編で書きますね、そう、番外編で←

はい、実は番外編で一話完結な感じの日常を書こうと考えておりますはい。

お付き合い頂けたら嬉しゅうございます(◎д◎)

ではお読み頂きありがとうございましたm(__)m

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