私の中の優先順位 | ナノ
14 向けられた純愛 2
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大人二人が入っても余裕で寛げる浴槽に満足気に浸かりながら、ピタリと密着する背中越しから否応なしにも伝わる強張った感触に思わず笑いが込み上げる。
「フフ、マルコさん緊張してるの?」
「っ、悪りかよい…」
「またまた、いい歳して笑かさないでよ」
恐らく本気で緊張している彼を笑い飛ばしながら、あからさまな緊張を見せる大の男に苦笑いを漏らしていると、息を飲む気配と共に強張っていた身体がゆっくりと湯を掻き分け私を包み込んできた。
「なぁ…#name#。…俺の女になってくれねぇかい?」
「…ぇっと、それは…無理だね」
「っ、何でだい?」
「だって…私マルコさんの事好きかわかんないもん」
「…っ、好きにさせるよい、これから。だからよい…」
「んー?止めときなよ、それにさっきも言ったけど…私、マルコさんが思ってるような女じゃないって」
「構わねぇよい。どんな#name#でも受け入れてやるよい」
「……どんな、でもねぇ」
「絶対後悔はさせねぇからよい、これから先俺と一緒に…時間を共有してくれねぇかい?」
「…共有?」
「必ず惚れさせてやるし、幸せにするからよい」
「マルコさん必死過ぎ…っ、」
「#name#…」
「…………」
「ダメ…かい?」
「…わかった。でも、知らないからね。それに好きになれないって見極めたら直ぐ別れてよ」
「お、おう!」
唐突に告げられた愛の言葉から伝わる必死さに困ったように振り返れば、そこに映る顔はあまりにも悲しげでまるで捨てられる仔犬のような瞳にぐっと母性本能を刺激された。
そこまで想ってくれているのかと自惚れる一方で、彼ならば例え結果離れていくにしてもきっと憎まれ口一つ立てず見送ってくれる筈だと妥協気味に頷きを返す。
そんな私の生意気とも取れる肯定の言葉を聞いた途端、首筋に顔を埋めながらお腹に回された腕が苦しいくらいに絡み付いてきた。
正直、これでいいのかと思う気持ちもない訳じゃなかったが、隠す事なく振る舞う無邪気なその様子に曇りのない愛情と信頼を感じ、軽い気持ちで始まるこの関係に少しだけ期待が膨らんでいた。