社会人編 番外編 | ナノ

#親父の心得



「可愛いなぁ…チビマル」

「そうだな、#name#に似てりゃもっと可愛いのになぁ」

「この髪型がネックだよな。せめて後頭部まで生えてりゃなぁ」

「「だよなぁ〜」」

「お前等…タコ殴りにしてやろうかい?」

俺は父親になった。#name#が妊娠していると聞いてからあっという間の出来事だ。

正直不安がなかった訳じゃねえ。産まれてくる子がたとえ俺の血を受け継いでいなくとも全力で愛す自信はあった。だが、やはり父親なんて未知の世界。僅かな不安は拭いきれない。

しかしどうだ。いざ産まれてくればこれはどこからどう見ても俺そっくり。いわば俺の分身。俺と#name#の愛の結晶だよい。

こいつを見た瞬間不安は嘘のようにどこかへ消えていった。そんな宝物はもう目に入れても痛くねぇ。
個性的で似合うものを選ぶ髪型、眠たげだが色気のある目元、形の整った鼻筋。俺を完全コピーした様なこいつは将来必ずビックな男になる筈だい。間違いねぇ。

「おい、エースもシャンクスも近付き過ぎだい!病原菌がうつるから離れろよい」

「持ってねぇよ病原菌なんてよぉ」

「ここは敢えて俺の美男子菌を植え付けたがいいだろ、今後の為に」

「おい!舐めようとするんじゃねぇ!ギャー!!」

危機一髪の所でシャンクスの魔の手から愛する息子を救いだしホッと溜息を吐く。

異変がないかくまなく息子の顔を確認しながら病原菌にキッと睨みを利かせた。
だれがシャンクスなんかに舐めさせるか!汚ねぇよい!腐るよい!汚染されちまうよい!

「クハハハ、必死だなマルコ」

「当たりめぇだい!舐めたりしたら間違いなく何かしら菌が…」

「マルコ…俺を何だと思ってるんだ…」

「あ?救いようがねぇ病原菌本体」

「マルコさん、そんな言い方しちゃダメですよ」

「だってよい…」

「そうだぞマルコ、俺は善玉菌だ」

「「「…」」」

悪乗りしだしたシャンクスに皆が冷たい視線を送った。まぁ、そんな事はどうでもいい、と言うか糞シャンクスの事なんかどうでもいい。俺はこの腕の中でにこやかに笑う息子が可愛くて仕方がないんだい。

そうして邪魔者が帰った部屋で再び幸せを噛み締めながら息子を眺める。
こいつが生まれてからと謂うもの暇さえあればこうやって我が子の傍らで過ごしていた。どんだけ見てても見飽きねぇよい。

「マルコさん、そろそろお風呂どうぞ?」

「ん?あぁそうだねい。よし、こいつも一緒に入るかねい」

「首に気を付けてくださいね、じゃぁ準備してきます」

「おう」

#neme#が風呂の準備をしている間に息子の服を脱がせておこうと優しく身ぐるみを剥ぎ取り、生まれたまんまの姿を見下ろしながらニンマリと口角が上がっていく。なんだいこの生物は。何もかもがミニマムサイズのその姿にだらりと頬が緩みだす。

「お前も大人になったらこれで女を泣かすんだろねい」

「ばぶ」

「くぅー可愛いようぉ!?」

「マルコさん?…あ、おしっこしちゃいましたね」

「よい」

チョコンとオマケの様に付いている息子の息子を指で突いた途端、勢いよく顔目掛けて生暖かい液体が飛び出した。

いいよいいいよい。愛する息子のしょんべんだ。顔からだろうが頭からだろうが喜んでかかってやる。
そうしてお風呂の前で良かったですねと微笑む#name#に頷きを返し息子を抱え風呂場に向かった。

髪を優しく洗ってやりながら俺と同じで洗いやすくていいと一人絶賛する。
体も全て綺麗に洗い共に湯船に浸かっていると改めて幸せな気持ちが込み上げてきた。

堪らねえ。愛しすぎて食っちまいたいくらい可愛過ぎるよい。

そんな息子のおへそ辺りにかぶり付こうとした瞬間、濁音の混ざった効果音と共に湯船がみるみる茶色に染まっていく。

「…このタイミングでかい。お前は大物になるよい」

「んばぶ」

「#name#ーーーーーーーー!!」

「はいはい…何ですかこの湯船…」

「新種のバスクリンだよい」

「赤ちゃん…また洗い直してくださいね」

「…よい」

いいよい。何度だって洗ってやるよい。可愛い息子の為だい。こんな糞まみれになっても全然へっちゃらだよい。

そうして俺の子育ては続く。こいつが一人前になるまで、俺と#name#で精一杯愛情を込めて育ててやるよい。


「あ、マルコさん抱っこするならゲップさせないと…あぁ」

「……もどしちまう訳だねい」

「はい…」

「いいよい、もう…何でも俺にかければいいよい。ほれ、次は何だよい?」

いかなる時も広い心で受け止めよ。
親父の心得だよい。

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