鬼畜な彼の愛し方 <img src="//img.mobilerz.net/img/i/63879.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

幸福×驚愕



「何だかご機嫌だねい」

「ん?そうですか?」

「いい事でもあったかよい?よっと、」

「わっ、…いい事ですか?…とくにないですよ」


彼の部屋でいつもの様に寛いでいた中、疑問符と共に伸びてきた腕に軽々と持ち上げられ膝に下ろされた後、悪戯な笑みを浮かべながらまるで探る様に見つめられる。

そんな彼に苦笑いを漏らしながらローからもらった太鼓判が頭を過った。

あの言葉のお陰で彼への疑心が拭い去られ、愛情の重みがまた一つ、増した気がする。
そんな心の変化が何かしら表に出てしまっていたのだろう。

「何かあったんだろい?言えよい」

「何もないですよ」

「#name#、俺は嘘と隠し事が嫌いだよい」

「っ、してませんよ。隠し事なんて」

「ククッ、#name#は嘘つきだからねぃ」

「嘘っ?…酷いです」

そんなケタケタと笑いながら何もかもお見通しだと言わんばかりの眼差しに、思い当たる節が多過ぎて正直まともに顔を見れず思わず彼の胸に埋くまった。

その様子さえおかしそうに笑う彼に膨れ面のまま顔を上げれば、嘘さえも受け入れる様な優しい眼差しを向けられ、後ろめたさよりも彼への愛しさが込み上げる。

そんな撒き散らす程幸せな日々を送っている私は、マルコ先輩との日常を逐一ローに報告する事で更なる幸福を噛み締めていたのだ。

「はぁ…」

「ちょっと聞いてる?でね、」

「そんな事よりお前…夜な夜な男ん家に来てていいのか?」

「え?何で?ローは友達じゃない」

「はぁ…」

「…なに?」

心底呆れたと言わんばかりの溜息を吐きながら、どうなっても知らないと捨て台詞を吐くローに首を傾げた。

マルコ先輩には寝ると偽って遊びに来ている事は少し後ろめたさはあるが、許された時間でローと話す機会は今しかない。

それにローとはあれから身体を交えるどころかキスさえしておらず、今ではまるで親友の様にさえ思っている。
そんな私達が夜な夜な会おうともさして問題はないだろうと、ローの言う言葉の意味を私は理解できずにいた。



そうして幸せ絶頂な日々を送りながら、何気ない会話の流れでふと思い付いた様にマルコ先輩が口を開く。

「昨日は電話切った後…すぐ寝たのかい?」

「え?昨日…ですか?たぶん」

「…たぶんかい?」

「っ、ね、寝ましたよ」

「……へぇ」

「っ…」

昨夜もローの家に行ったにも関わらず、曖昧な返答をした途端急に威圧的になった態度に思わず吐いてしまった嘘を後悔するも、少し苛立ち気味な様子の彼を目の前に怖じ気づき押し黙ってしまう。

そうして少しギクシャクとした雰囲気で心に蟠りを残したまま家路に着き、いつもの様に日課である電話を切った後、やはり様子の違う彼にモヤモヤと胸がざわつき出す。

ローの家に行ってる事を彼は絶対に知る筈もない。ならば他の理由で機嫌を損ねてしまったのだろうか?

次々と浮かび上がるマイナス思考に気が沈みながら、これはローに打開策を求めようと腰を上げ玄関に向かう途中ふと母親が作り過ぎたと嘆いていた夕食を思い出す。

そんないつもはない手土産を片手に家を出れば、門を開けた途端飛び込んでくる見慣れた車と寄り掛かる人影を捉えた瞬間、私は心臓が飛び出るのではないかと思うくらい驚愕しながらその場に凍りついてしまったのだった。

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