鬼畜な彼の愛し方 <img src="//img.mobilerz.net/img/i/63879.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

後悔×渇求



衝動に駆られ考え無しに来てしまった事に頭を抱えながら、私は彼の家の前で呆然と立ち尽くしていた。

顔も見たくないとはっきり拒絶しておきながら、好きだの心配だからだのという理由で家まで来られては彼だってたまったものじゃないだろう。
どれだけ無神経なんだと、更に嫌われる事は目に見えている。

それでも地に根が生えてしまったようにピクリとも動かない足と、マルコ先輩に会いたい気持ちだけは膨れ上がる一方で、一向に状況は変わらず時間だけが過ぎていく。

しかし、さすがに門の前でじっと佇んでいる不審人物を見逃す筈もなく、カチャリと音を立て開いた目の前の鉄格子に顔を上げれば、首を傾げ食い入るように見つめる人物が目に入った。

「えーっと、…#name#ちゃんだったか?」

「ぁ…はい」

「誰かと思ったぜ、制服着た女がずっと立ってたからよ」

「っ…すみません」

「いやいや、マルコに用事か?」

そんな言葉に遠慮気味に頷きを返し、記憶を呼び起こす。
以前あの別荘に居合わせた兄弟の一人だと一致したところで軽い会釈と少し引き吊った笑顔を向ければ、マルコなら部屋に居ると、強引に腕を引かれ室内に促された。

まだ会う勇気も決意も定まらない中、アポイントもなければ明らかに招かれざる客である事を言葉を濁しながら伝えれば、気にするなと屈託のない笑顔で流されてしまう。

気にするなと言われても、戸惑いは拭いきれない。
会ってどうする?私に会いたくもない彼に厚顔を晒し、更に胸を抉られる結果に終わるに違いない。

そんな事を考え足がすくんだ。幾ら想いを寄せようと、この恋に待ち受ける結末は悲惨なものだろう。

やはり帰ろう。そう結論に達した途端陽気な声と共に背中に軽い衝撃を感じ、気付けばマルコ先輩の部屋へ足を踏み入れていた。

「マルコ!お客さんだぜ」

「っ!!ぁ、あのちょ…」

「じゃ、ごゆっくり」

「っっ!」

にんまり笑い扉の向こうに消えていった彼を唖然と見つめながら、この非常事態にごくりと固唾をのんだ。

背後から突き刺さる様な視線を感じる。まずマルコ先輩に違いないだろう。
すぐ目の前には扉。無音で異質な空気が漂う中、堪らずドアノブに手を伸ばした瞬間、こちらに近付く足音に体が硬直した。

「…何しにきた?」

「……ぁ…あの、っっ!」

くるりと視界が反転したかと思えば、退路を断つように顔の左右に手をつかれ鋭い視線が突き刺さる。

「……」

「ぁ、あの…ご、ごめんなさい」

至近距離に感じるマルコ先輩に早鐘が鳴り響き、同時に鼻を掠めるアルコールの匂いに気付く。

まだ陽は高い。昼間から目が据わるほどお酒を飲んでいたのかと心配心が顔を出す。

「酔ってる…んですか?」

「……」

「サッチ先輩に…部屋に隠ってるって…聞いて」

「……で?」

「っ…心配で…」

「っ……」

そこまで言い終えた途端、一瞬マルコ先輩の瞳が揺れ痛いくらい抱き締められた。

そんな状況に飛びかけた思考を呼び起こそうとしたが、拒絶されなかった喜びと、狂いそうな程触れたかった温もりに勝てる筈もなく、込み上げる想いをぶつける様に彼の背中に腕を回したのだった。

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