鬼畜な彼の愛し方 <img src="//img.mobilerz.net/img/i/63879.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

同情×愛情



自分で歩く事もままならないほど虚脱感に覆われた私は、半ば引き摺られる様に連れてこられたローの部屋で未だじめじめと頬を濡らし項垂れていた。

「おまえ…いい加減泣き止め」

「ヒッ…だって…」

「はぁ……」

「聞かないの…?な…ヒック…何があったか」

「あぁ…めんどくせぇ」

「……マルコ先輩がね」

「聞いてないぞ」

「…ぅっ…もう顔も…グズ…見たく…ないってっっ」

「………」

隣からの冷めた視線を無視して、一人で抱え込むには耐えきれない悲痛を吐き出した。
思い出すだけでも胸が引きちぎられそうになるというのに、言葉に出すと尚更痛みが増す気がする。

わんわんと嗚咽を伴い泣き喚く私の横では、絶えず面倒臭そうな溜息が聞こえてくる。
それでもお構い無しに感傷に浸る私に、どこか嘲笑うような声色が隣から投げられた。

「フッ…当然の結果だろ、惚れたお前が悪い」

「ぅっ…鬼…」

「俺は止めておけと忠告したぞ」

「……」

「ま、よかったじゃねぇか…」

「…よくない」

「…とにかくすっぱり諦めろ、引き摺るだけ無駄だ」

「グズ……なんでこんなに…嫌われちゃったんだろ」

「……知るか」

「はぁ……グズッ」

「……うぜぇ」

優しい言葉なんて一言も口にしない彼だが、面倒臭そうにしながらもティッシュの箱を押し付けてくる所はやっぱり優しさなんだと思う。

昔から何事も顔に出さず何を考えているのか分からない彼だが、よくよく思い出せばかなり優しくいい男なんじゃないかと、少しだけ思った。

「俺には何で惚れたのか意味がわからないがな」

「わたしも…わからない」

「…アホか」

「でも…好きなんだもん」

好きになるのに理由なんて…ないと思う。
いつの間にか、だ。
そんな不意に訪れた感情のクセに、こんなにも心に大打撃を御見舞いしてくるなんて迷惑極まりない。
モヤモヤと少しずれた想いを描いていると、グイッと腕を掴まれ包み込む様に抱き寄せられた。

「っっ!?な、なに!?」

「いつまでもんな顔してんじゃねぇ」

「だって……」

「……手伝ってやるよ」

「…なにを?」

「ククッ…忘れるのを」

「っっ!? 誰が!?」

「俺が」

「…俺がって…んっ!?」

引き寄せられ目が合った瞬間、正直ドキリとした。
普段の冷静で無機質な瞳ではなく、哀愁漂う切なげな色を宿した眼差しを向ける彼にどう接したらいいのかわからなくなる。

不自然に目を逸らした私に追い討ちを掛ける様に繋がれた言葉。
その意味を探るべく言葉を遮断した唇。

何を考えているのかさっぱりわからなかったが、嫌ではない自分がいて、だんだんと深くなる口付けに戸惑いながらも、無意識に伸びた腕はまるで彼の言葉を受け入れるかの様に力が籠められていく。

それでも、頭の片隅に確かに存在するマルコ先輩が消える事はなく、より苦しくなる胸と先程までとは違う感情の涙が込み上げてくるのを感じていたのだった。

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