鬼畜な彼の愛し方 <img src="//img.mobilerz.net/img/i/63879.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

空虚×虚勢



別荘から突然居なくなった#name#から止めを刺す様な拒絶の言葉を投げ掛けられた時、鈍器で殴られた様に鈍い痛みと共に思考が停止した。

それと同時に、こんなにも自分への不満と嫌悪感を隠し持っていた事に、身に覚えはある事とはいえ、酷く驚き、どうしようもない虚脱感に覆われる。

追い掛けなければと思いつつも、縫い付けられた様にピクリとも動かない足に逆らう気力もなく、走り去る彼女を呆然と眺め暫く立ち尽くした後、このまま帰す訳にはいかないだろうと動かぬ身体に鞭を入れた。

そうして暴れ嫌がる彼女を車に押し込み、かなり強引だか睡魔という強力な味方が加担しホテルへ連れ込む事に成功する。

彼女の悪ふざけから目覚めた後、先程の様な拒絶がなかった事に心底胸を撫で下ろしながらも、恥ずかしげに告げられた思いも寄らない言葉に胸が高鳴った。

『対等に接したい』
それは俺と肩を並べていきたいという意味なのだろうか?
俺に屈する訳ではなく、自らの意思で傍にいてくれるという事なのだろうか?

そんな疑問と期待が入り交じる中、まるで俺を求めるような仕草に一気に愛しさが込み上げる。

結局、何故別荘から飛び出したのかは分からず仕舞いだが、寄り添うように眠る#name#の顔を見ているとどうでもよくなった。

あんな形で始まった関係だ。あの言葉を口にするまでに彼女の中で複雑な葛藤が繰り広げられたのだろう。

そんな気持ちを汲むように、すやすやと眠る彼女に触れるだけの口づけを落とし少しきつめに抱き締める。
もっと求めて欲しい。俺だけを見て欲しい。そんな欲が沸々と沸き上がる中、#name#との関係に新たな兆しが見えた事に体が震えるほど喜びを感じていた。



そんな順風満帆な俺の心は、翌日意図も簡単に崩れ落ちる事になる。



「何朝から沈んでんだい?飯でも食いっぱぐれたのかよい?」

「…いや。はぁ…なぁマルコ。俺さ、今日#name#に振られるんだ…」

「……は?」

「#name#…ほら、前にマルコが保健室に連れていこうとしてた…」

「あ、あぁ」

「その#name#にさ、俺振られるんだよ…絶対…はぁ…」

「…告白でも…したのかい?」

「いや…実はよぉ…」

朝からどんよりとした空気を纏ったエースにからかい半分声を掛ければ、憂鬱を撒き散らしながら告げられた耳を疑いたくなる様なその言葉に、俺はうまく息も吐けないほど気が動転していく。

エースの話しによると、ずっと気になっていた#name#が学校を休んだ事を心配し、見舞いに行った際に告白され、その日に体を重ねたという。
それから直ぐには付き合わず、家庭の問題が解決するまで待って欲しいと言われた事。
そのまま暫く経ち何の音沙汰もないまま、顔を合わせればぎこちない態度をされるのだと。

そんな過程を経て、今日、いい加減白黒着けようと約束をしたのだと。


家庭の問題?#name#がエースに告白した時期は俺と出会った後だ。
その問題とは間違いなく俺の事だと察しが付く。

そして昨日の#name#の言葉。
対等に接したいと言ったのは、俺の思っていた内容とは掛け離れていたという事か。

あぁ…そう言えばそうだなと。
彼女は言っていたじゃないかと。顔を見るのも触られるのも嫌なんだと。

そして俺からの脅迫に屈しないと宣言した今、彼女の問題は解決されたと…これで心置きなくエースと結ばれる…と。

#name#の心の中には初めからエースしかいなかったのだと裏付けが一致したところで、目の前で未だうだうだと頭を抱えているエースの肩を一叩きし教室を後にする。

そうしてそのまま家路へと足を向けながら、やり場のない想いで頭がどうにかなっちまいそうだった。

昨日あんなに求め合った彼女は、これで俺に抱かれるのも最後だと精々しながら心の中で笑っていたのだろう。

そんな事を考えていると当然の行いとはいえ、彼女からの仕打ちに怒りにも似た感情が込み上げてくる。
一人浮かれ的外れな想いを抱いていた自分に嫌気がさしながらも、踏みにじられた想いは湧き水の如く溢れだし俺を更に苦しめる。

部屋に着きベットに身を投げ深すぎる溜息を洩らした後、彼女の十全なまでのこの仕打ちに思わず自嘲的な笑みがでた。

さすが俺の惚れた女だと。
すっかり騙されその気にさせられちまったと。

そんな空笑いで気持ちを静めていると、無造作に放り投げた携帯がけたたましく鳴り響いた。

舌打ちを吐きながらそれを手に取れば、ディスプレイには#name#の名前。

その名を目にし一気に眉間に皺が寄った俺は、最後の弾丸でも放つ気なんだろうと身構え応答する。

しかし、何故か口籠りながら的外れな言葉を口にする彼女に苛立ちを覚えた俺は、プライドが虚勢を張りまるで自らが手放す様な言葉を放ち彼女の声を遮断した。

誰が悪いと問われれば、間違いなく自分に指が向けられるだろうこの関係の終止符に、謝罪の一つも言えやしない自分を情けなく感じながらも、やるせない気持ちは溢れるばかりで今にも押し潰されそうだ。


解放された彼女は、今頃喜び露にエースの胸にでも飛び込んでいるのだろうか?
そんな事を考えながら、意識に蓋をする様に固く瞼を閉じた。

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