鬼畜な彼の愛し方 | ナノ
始まる×対等
自然と繋がった唇から伝わる熱に頭が真っ白になり掛けた頃、じわりと服の裾から忍び込んでくる彼の手を感じた私は、急速に理性を引っ張り出しその手を掴んだ。
「?…なんだい?」
「嫌です」
「…あ?」
「しませんよ、エッチは」
「…なんでだい?」
「……したくないから」
途中で拒絶されたマルコ先輩は、そんな私の言葉に顔をしかめ頭に疑問符を浮かべている。
そんな彼を見つめながら、このままいつもの様に抱かれたのでは何も変わらないと、はっきりと彼の操り人形ではない事を示さなければと、この苦悩の日々を終わらせる為にゴクリと固唾を飲み込み口を開く。
「マルコ先輩の言う事はもう聞かないんです」
「…へぇ」
「っ…だから…今はしたくないからしません」
「"今"、はかい?」
「……っ」
「じゃぁしたくなる様に…仕向けりゃいいんだろい?」
「っ違います!そうじゃなくて…もぅ…」
うまく伝わらない想いに胸がモヤリとざわついた。
どう言えば、どの言葉を口にすれば彼に伝わるのか。
真っ直ぐに私を見つめ口元の緩んだマルコ先輩を見上げ、先程よりも何倍も増したもどかしさが覆う中、それでも何か伝えようと途切れ途切れに言葉を繋ぐ。
「あの写真…」
「ん?」
「あの写真は…好きにしていいですから…」
「……」
「もう私を縛る物は…ない…じゃないですか」
「あぁ…そうだねい」
「だったらっ!もう…やめてください」
「嫌だよい」
「っ…私は…」
「…私は?」
「私は…マルコ先輩と…対等に接したい」
「#name#……ククッ、成る程ねい」
「……」
「あぁ…いやよい、そんな事考えてたなんて思わなかったよい」
「っ…」
「ククッ…で?対等になった今、どう接したいんだい?」
「ぅ…どうって…」
おかしくて堪らないといった表情でそんな事を聞かれ言葉に詰まる。
どう接したいかなんて、正直なんて答えればいいのかすぐには思い浮かばず、そんな黙りの私に追い討ちを掛けるように頭上から笑いを含んだ声色で言葉が降りてきた。
「なんだよい?言えねぇのかい?」
「っ…だから…」
「ククッ…もういいよい」
「ぇ…ぁっ嫌ですって!」
「対等な立場で抱かれるんだい。なんも問題はねぇだろい?」
「ちょ…っと意味が違いませんか?私は…ンッ…もうっ先輩っ!」
「ごちゃごちゃ煩いねい…。俺は抱きたい。#name#は抱かれたい。なんも問題ねぇだろい?」
「抱かれたいなんて一言も言ってませんよ?」
「あ?顔が抱いてくれって言ってるよい」
「……」
都合のいい解釈で事を進め首筋からどんどん下がっていくマルコ先輩を見据えながら、少なからず目的の意思は伝える事ができたのではないかと、
どこか胸のつかえがおりた様な解放感を感じた私は、ちゃんと理解してくれているのか分からないマルコ先輩に少なからず不満を感じつつも、結局惚れた弱みなのだろうか…
対等な立場で抱かれるのならばと思い直しそっと彼の肩に手を触れさせた。
そんな抵抗をやめた私をチラリと伺うマルコ先輩に苦笑いにも似た笑みを向け、まるで先を促す様に彼の唇に指を滑らせたのだった。