鬼畜な彼の愛し方
| ナノ
敵意×視線
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あれからお風呂場でいつもとは違う雰囲気で過ごした後、当然の様にベットに沈み肌を重ねた。
赤から青く変色していく痕に痛々しい眼差しを向けながら、何度もソレに唇を落としてくるマルコ先輩に再び胸が苦しくなる。
「暫くは消えねぇな…」
「っ…はぁ…」
「ったく…気を付けろよい」
「…はい」
すっかり信じきっている彼に曖昧に頷きを返しながら、今度からは絶対に気を付けようと彼の思考とは違う形で決意を固め視線を向けた途端、肩肘を付いてこちらを見据えるマルコ先輩が思い立った様に口を開いた。
「あー…そうだ。今週末遠出するから開けとけよい」
「遠出…ですか?」
「あぁ、兄弟達も一緒だが…構わないだろい?」
「…はぁ」
毎度の事だが怪しげな笑みがいつにも増して不安を駆り立てる。
兄弟達…?サッチさん以外知らない面子を思い浮かべ、何故か無性に胸がざわついた。
それでも断る理由も権利もない私はただ首を縦に振るばかりで、片方だけ口角を上げ頭を撫でる彼を見上げながら、戸惑いを隠す様に無理矢理笑みを作り出す。
そして当日。行き先も聞かされず特に何も持ってこなくていいと言う彼に疑問を浮かべながらも、最低限の荷物を抱え迎えに来た車へと乗り込む。
「あの…何処へ行くんですか?」
「ん?あぁ…恒例のねい…まぁ…泊まり掛けのお遊びだよい」
「…で何処へ?」
「ククッ…着けばわかるよい」
「……」
何か含み笑いを浮かべるマルコ先輩の横顔に疑心の眼差しを向けながらも、二時間ほど走り続けた車は海辺のコテージの様な建物に辿り着いた。
「ここは…?」
「あぁ、うちの別荘だい」
「別荘…」
海を見渡せる小綺麗なその佇まいを眺めながら、こっちだと私の荷物を片手に手を引かれ室内へと導かれる。
「遅かったな、マルコ!もう始めてるぜ?」
「あぁ、構わねぇよい」
「お、その子が噂の」
「こっちに来て一緒に飲もうぜ?」
「気軽に話し掛けんない、#name#来いよい」
「っ…」
部屋に入るなり向けられた興味深々な眼差しと共に注がれる、敵意的な視線に思わず息を呑んだ。
マルコ先輩の兄弟だろう数名の男性に寄り添う同じ人数の女性達。
そんな彼女達から向けられる視線が刺さる様に突き刺さる。
まるで異色な雰囲気の私を何者だと物色するように。
「なぁに?マルコ。その子」
「煩せぇよい」
その中でも一際美人な顔をした女性からの呼び掛けに鬱陶しさを隠す事なく切り捨てた彼は、私の手を握り直し部屋へ案内するとすぐにその場を後にした。
ぐんぐんと手を引き歩き出すマルコ先輩の後を追いながら、あの女性とはどういう間柄なのかとチクリと痛む胸に不安を覚える。
しかし、連れて来られた部屋から覗く絶景を見た瞬間、先程の思いを吹き飛ばす光景に思わず歓喜の声を上げてしまった。
「わぁ!すごい!海がすごく綺麗ですね!」
「ククッ。だろい?」
「わぁ……」
「#name#に見せてやりたかったんだい」
「っ…あ、ありがとうございます」
「ん…」
バルコニーの手摺に身を乗り出すように手を付いてた私を、後ろから抱え込む様に抱き締めてくる彼に煩いくらいに心臓が高鳴っていく。
そうして自然と重なる唇に溶けそうになりながらも、この後嫌でも顔を合わすだろう彼女達との関わりに、沸々と嫌な予感が込み上げて来たのだった。