鬼畜な彼の愛し方 <img src="//img.mobilerz.net/img/i/63879.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

偽造×不安



グラグラと体が揺れる感覚に重い瞼が開き光を受け入れていく。
寝ていたのかとはっきりとしない意識で認識しながらも、未だ揺れている感覚に疑問と不快な気持ちに襲われた。

「おい#name#…いつまで寝る気だ?」

「……」

「起きろ。もう放課後だぞ」

「……ロー…放課…後!?」

「あぁ。いい加減起きたらどうだ?」

「うそ…もう!もっと早く起こしてよね!」

「…知るか」

睡眠不足の体はどうやらこれ見よがしに熟睡を堪能した様だ。お陰で気だるさは無くなったが放課後まで寝てしまったという事実に少し項垂れる。これじゃ寝に来た様なものじゃないか。

「ほら、鞄。後、さっきから携帯が煩ぇくらい鳴ってるぞ」

「あ…ローにしては気が利くね。…携帯?」

「チッ…人の善意を」


ブツブツと小言を言うローに目もくれず鞄の中の携帯を確認した。
やはりと言うか、その煩いくらいに振動している着信相手はマルコ先輩で、その震えからまるで彼の苛立ちが伝わってくる様だ。

「出ないのか?」

「…出るよ…喋らないでよ?」

「……」

ニヤリと不適な笑みを向けたローに嫌な予感がしながらも、急かす様に鳴り続ける着信に手を伸ばした。

「…はい」

《出るのが遅いよい…もう授業は終わったろい?》

「はい…」

《ったく…何してたんだい?》

「ぅ…居眠りを…わっ!?」

《あ?どうした?》

「ぁ、何でもありません…あ、あの何でしょうか?」

《あ、あぁ。15分後裏門に居ろよい、迎えに行く》

「えっ!?いや…今日は…」

《居ろ。じゃぁねい》

「あっ!ちょマル……ってロー!!」

「あ?」

予想はしていたが通話中をいい事にやわやわと胸を揉みながらボタンを外していくローに鋭い目線と攻防戦を繰り広げていると、無理矢理約束をこじつけられ断る暇なく通話を終了されてしまった。

「もぅ!大人しくしててって言ったでしょ!?」

「いや、喋るなとしか言われてねぇ」

「屁理屈!お陰で断れなかったじゃない!…どうしよ」

「よっ、大丈夫だ」

「ちょっ、降ろして離して嫌嫌嫌!!」

「煩ぇよ…ちょっとじっとしてろ」

「うわっ!ダメ!今からマルコ先輩に会うんだから!っ痛っーーー!?」

「フフ…だからこうして偽造してやるんだよ」

「痛い痛いっ!!ちょ、本気で痛いって!」

「あぁ…だろうな。我慢しろ」

「痛ーーーい!!!」

肌けた胸元のまま膝の上に乗せられ、今朝付けた印をこれでもかというくらいつねり上げられあまりの痛さから絶叫と共に涙すらでる始末だ。

「もぅ!!痛いってっ!」

「もう少し…」

「っっ!痛ーーい!!」

「よし。こんなもんだろ」

「……ロー。歯を食いしばれ」

「あ?その前に感謝しろ、痕、キスマークってバレねぇだろ?」

「ぇ…ぁ、ほんとだ」

「これで今からあいつに抱かれてもバレねぇなぁ」

「……。って言うかこんな事するなら初めから付けないでよ」

「ククッ、それもそうだな」

「やっぱり歯!食いしばれっ!ちょ…んっ」

不機嫌丸出しの私をものともせず、未だ膝の上に座る体を力強く引き寄せたかと思えば噛み付くように口を塞がれた。

ローとは何度か体は交えていたが、実を言うとキスをするのは初めてだった。そんな戸惑い感丸出しの私を他所に、頭と腰をしっかり固定しねっとりと口内に入り込んできた舌は私の舌を絡めとる。

そんな初めてのキスに唖然と呆けていると、軽いリップ音を響かせ濡れた唇をひと舐めしたローは、またもニヤリと笑みを浮かべながら口を開いた。

「今からアイツともキスするんだろ?」

「っ…わかんない」

「フフ…するだろ。そうしたら…俺とアイツは間接キスだな」

「なっ!?気持ち悪いこと言わないでよね!うわっ…想像しちゃった…」

「ククッ…ほら、もうそろそろ行ったがいいんじゃねぇか?」

「え?あ、あっ!もうっ!じゃあね!バカロー!」

「…あぁ」

不可解な行動と言葉に未だ疑問が残る中、とっくに過ぎてしまっている約束の時間に焦りを感じつつ裏門へと急いだ。

息を切らしながら目的地に着けば、エンジンを掛けたまま停車している彼の車が目に入る。
車で迎えに来るという事は、マルコ先輩は学校へは来なかったのだろうと思いながら助手席の窓を軽くノックした。

「…乗れ」

少し不機嫌な声色で告げられた言葉にビクリとしながらも素直に乗り込む。
腰を落ち着かせたのを確認したマルコ先輩は、ゆっくりとアクセルを踏みチラリと此方を伺った。

「#name#…寝てたのかい?」

「は、はい」

「ククッ、だろうねい。顔に痕が付いてるよい」

「っ!?」

頬に未だ残る痕を両手で隠す様に覆いながら、恥ずかしさが込み上げると同時に先程つねり上げられた胸元がズキリと痛んだ。
それを咄嗟に押さえれば、すかさず横から声が掛かる。

「どうした?」

「っ…あ、いや…来る途中につまづいて…」

「胸を打ったのかい?」

「…はい」

「……」

咄嗟に出た嘘に賛美しながらも、これであの痕を見られても大丈夫だと安堵する。
そんな私の言動に怪訝と心配した面持ちを見せたマルコ先輩は、思い立ったかの様にいきなりスピードを上げだした。

少し眉間に皺を寄せながらどんどんスピードを上げていく彼を不思議そうに見詰めながらも、ドクドクと脈打つ胸を押さえながら本当にバレはしないかと私は不安な気持ちに襲われていたのだった。

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