鬼畜な彼の愛し方
| ナノ
幸福×蔑み
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あれからキスだけでは治まりきれない欲情に駆られた私と、同じくマルコ先輩は、溢れる熱を分け合うように体を重ねた。
そうして一睡もしないまま自宅へと戻り、別れ際に触れるだけのキスを贈られた私は、まるで恋人同士の様なその空気に一人酔いしれながら、まだ寝ている両親に気付かれぬよう静かに部屋に辿り着き音を立てず扉を閉める。
枕にポスンと顔を埋めた私は、きっと誰が見ても真っ赤な顔をしている筈だ。別にマルコ先輩との関係が進展した訳でも愛を囁かれた訳でもなかったが、今私の心は幸福に満ち溢れていた。
好きな人に名を呼ばれ抱き締められ体を重ねる。
そんな一つ一つの行為がなんだかとても幸せな気持ちにさせる。
そして何度か寝返りを打ちながら惚けた頭がくだらない事を考え出す。
このまま体だけの関係でも構わないと、傍に居れるならそれでもいいと、そんな思考が繰り広げながらも、やはりダメだと浅い溜息が漏れた。
傷付きたくない。自分の体裁を守る心がどんどん顔を出し始めピンクの靄をクリアにしていく。
それでも目を瞑ればマルコ先輩の顔しか浮かばず、定まらない気持ちのまま学校へと足を向けた。
睡眠不足とマルコ先輩の事で全く授業に身が入らず終始虚ろな目で過ごす中、何度目かの溜息を吐いた途端パシリと頭を叩かれその痛みと不快感に我に返る。
「っ!?痛った!」
「なに間抜けな面してんだ」
「くっ…なに?バカロー」
「……ちょっと来い」
「もっ、痛い痛い!」
いきなり現れた幼なじみに痛いくらいに腕を引かれ、人気の無い教室へと連れていかれる。
学校ではあまり話した事などなく、話す話題も見当たらない彼からの連行に隠す事なく迷惑顔をお見舞いしてやると、ニヤリと意地の悪い笑顔を見せながら腰を引き寄せられた。
「なっ、近い!何?」
「抱かせろ」
「は?」
「他の女じゃイカなくなった」
「は?イカ?」
「…いいから黙って抱かせろ」
「ちょ、意味わかんないってばっ!わっ!」
テキパキとボタンを外していく彼の手を払いながら必死で抵抗するも、スルリと抜かれたリボンで両手を拘束されてしまう。
「ちょっと何!?痛いんだけど!放してよ!」
「あぁ…終わったらな」
「終わる!?な、いやっ!きゃ!」
「うるせェな…ちゃんとイカせてやるから黙ってろ」
「いや!わっ!変態っ!」
「濡れてねぇな…ったく」
「ったくじゃない!いやっ…!んっ…」
「フッ…すぐ終わるから黙ってろ」
遠慮なしに下着を剥ぎ取られ、敏感な突起に伸びた手は手馴れた手付きで動き出す。
こんな経験はマルコ先輩で既に経験済みだ。
気持ちとは裏腹に体は反応してしまう。相手が誰であっても…だ。
「ぁっ…ぃや…ロー」
「嫌じゃねぇだろ、こんなに濡らして」
「んっ、気持ちが…嫌なの!」
「あー、ククッ…体がいいならいいじゃねえか」
「っ…あっ……もぅだめ…」
「ん…イケよ」
私の性感帯を知り尽くしているのではないかと思うくらいあっという間に絶頂に導かれ、力が抜けた体は頼りなくローに傾く。
それをしっかり抱き抱え拘束していたリボンをほどくと、カチャカチャとベルトを外す音がしたと思えば、グイッと片足を持ち上げられた。
「入れるぞ」
「……いや」
「ククッ…力抜いておけ」
「……もぅ…んっ」
「……あぁ…やっぱりいいな、#name#の中は」
「んっ、変な感…想言わないっ、でよ」
「あぁ……」
「ちょ、跡付けないでよ!?」
「……もう遅ェよ」
「えっ?もぅ…、バカっ!」
「ふんっ、くっ…そろそろイクぞ」
「ぁんっ…んっ、もぅ…」
「くっ…」
何食わぬ顔で行為を終え衣類を身に付けるローを睨みながら、胸元に付いた赤い跡を見つめる。
これは…これは絶対マルコ先輩に見られる訳にはいかない。
以前の経験からすると、頬を叩かれるだけでは済まなそうだ。
それに…もしかしたら嫌われてしまうかもしれない。
そんなの…
「もう!!何考えてんのよ!」
「…ご馳走様でした」
「叩くよ…」
「うるせェな、仕方ねェだろ、他の女じゃイカねェんだ」
「…知らないよ、そんなの」
「それに気持ち良さそうな声出してたじゃねぇか」
「っ!それは…それもダメだけどコレ!なんでキスマークなんか付けるのよ!!」
「あぁ…フッ、これであいつに愛想でも尽かされりゃ願ったりじゃねぇか」
「っ…」
「…?なんだ?お前…まさか…」
「…ったんだもん」
「あ?」
「好き…になっちゃったの!」
「はー?レイプ魔にか?」
「……ぅん」
「………やめておけ」
「………むり」
「はぁ……バカはどっちだ」
そうして哀れみを含んだ目で見られながらも、好きになってしまったものは仕方がないと盛大な溜息を吐かれ消えて行ったロー。
一人になった教室で、もっとローに罵声と鉄拳でもお見舞いすればよかったと後悔しながらも、やはりマルコ先輩を好きになるという事は無謀な事なのかと項垂れる。
しかし、既に私の中に宿ってしまったこの気持ちを抑えられそうな窮余の策も浮かびそうになく、そんな幸先よろしくない事を思いながらもまた好きでもない人とこうも簡単に体を交えてしまった自分を蔑む。
「はぁ…いつ消えるかな…コレ…」
そんな事を呟きながら、強烈な睡魔に襲われた寝不足の体は、この憂鬱な気分を消し去るように私を夢の中へと連れていってくれたのだった。