鬼畜な彼の愛し方 <img src="//img.mobilerz.net/img/i/63879.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

高鳴り×苦心



結局いつまで経っても眠れなかった。首に回された腕、腰に掛かる重み、背中から感じる温もり、そしてすぐ耳元で聞える彼の吐息。
全てが私の五感を刺激し気持ちを高ぶらせる所為で、眠気なんて訪れる訳がない。

マルコ先輩はもう寝てしまっただろうか?
耳に響く一定の呼吸を聞く限りでは、寝ていると…思う。
別に寝ていようが起きていようがどちらでもいいのだけれど、振り向いて確かめる勇気もその必要性もない。

しかし一向に眠れない私は寝返りを打つ事もましてや起き上がる事もできず、彼に聞えない程度に浅く溜息を吐くばかりだ。

そうしてふと目に入った首の下から伸びた彼の手を見つめている内に、無意識に、ほんと無意識にその投げ出された手に自分の手をそっと重ねてみた。
少し冷たさを感じるその手を、まるで温める様に両手で包む。

私を物の様に扱い自分勝手ですぐ怒り、誰とでも寝てしまう様な最低な人だけれど、いつの間にか好きになっていた。
理由なんかわからない。それこそ初めは嫌で嫌で堪らなくて嫌悪感しか感じていなかったと言うのに。
自分でも不思議で仕方がない。
そんな事を考えていると少し大きめな溜息が漏れてしまった。しまったと思った瞬間、触れていた彼の手に力が入る。


「なに溜息なんて吐いてんだい?眠れねェのか?」

「っ!お、起きてたんですか?」

「あぁ…」

「っ…」

てっきり寝ていたと思っていた彼が動き出した事に心臓が急速に騒ぎ出した。
触れている手を咄嗟に放そうとしたが、きゅっと握り返され阻止される。そんな自らした行為だが恥ずかしくて呼吸が止まりそうだ。

「ククッ…手、繋ぎたかったんだろい?」

「っっ…い、いえ」

「嘘付け…」

「……」

恥ずかし過ぎる。まるでお見通しの様にくつくつと喉を鳴らしながら首元に顔を埋めてくる彼に、どうにかなりそうなくらい鼓動の高鳴りが加担した。

「なぁ…#name#…」

「はっ、はい」

「…あの女はなんも関係ねェよい」

「…ぇ?」

「#name#が思っている様な関係じゃねェって事だい」

「っ…」

「それと…」

「わっ」

「俺が抱きたいと思うのは…#name#だけだ」

「っ!?」

「…#name#」

「で、でもっ…せ、先輩から…香水の匂い…」

「あ?香水?」

「しますもん…」

「…あぁ、近くに居たから匂いがうつったんだろい」

「っ…でも…」

「……ククッ」

思い立った様に告げられたその言葉に、嬉しさ反面、動揺と疑心も同時に顔をだす。
関係ないと言うマルコ先輩。でも彼からはしっかりと香水の香りが漂ってくる。密着でもしない限りこんなにはっきり匂いが付く訳がない。
そんな事を少し怪訝な表情で考えているとパサリと布が落とされる音がし、私の身体が少し沈んだ。

「これでもう匂わねェだろい?」

「ぁ…」

「…ん?」

「っ…はい」

匂いを纏った服を脱ぎ捨てたマルコ先輩は、そのまま私を閉じ込める様に顔の横に両手を付き、問題解決とでも言うよな顔付きで見下ろしてくる。

確かに…もう匂いはしない。服に付いていただけという事は、彼の言う通り身体を交えたりはしていないという事か?
それにしても…どうしてそんな誤解を解く様な事をするのだろうか?
これじゃぁまるで…

「マルコ…先輩…」

「ん?」

「……」

「っ……」

薄暗いルームライトに照され、少し困った様な顔をして私を見下ろしている彼の後頭部に手を伸ばし、ゆっくりと引き寄せた。

そうして重なった唇に、まるでこの複雑に入り交じった想いをぶつけるかの様に、深く、このまま溶け合ってしまいたいとさえ思う程深く口付ける。


「#name#…」

「ン…」

「っ…」

しばらくして離れていく唇に名残惜しさを感じていると、息の掛かる程近くに映る彼の目はとても切なげな光を宿していて、そんな彼に再びキスをせがむように肩をきゅっと掴んだ。

少し掠れた声で名を呼ぶマルコ先輩は、まるでこの気持ちに答えてくれるかの様に先程よりも更に深く唇を重ねてくれる。
そんな溶けてしまいそうな思考の中、僅かに残っている理性で考える。

この鬼畜な彼に愛されるにはどうすればいいのか…
そして、どう愛せばいいのか…

残りの理性が途切れる間際微かにその答えが見えた気がしたが、結局答えは形になる事はなく、彼から伝わる愛しくも切ない温もりに包まれながら私はどうしようもなく胸が苦しくなったのだった。

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