鬼畜な彼の愛し方 <img src="//img.mobilerz.net/img/i/63879.gif" border=0 align=absmiddle /> | ナノ

無様×独裁



エースが現れた瞬間、そのタイミングの悪さに思わず舌打ちがでた。
咄嗟に嘘が口を開かせたが、この状況はどう見たって退くしかねぇ。
#name#からキスをしてくるなんて初めての事に浮かれ、普段と違う時間を過そうかと思ったのが間違いだったか。

しかしエースは本気だな。あいつの目を見りゃ彼女にぞっこんなのが見て取れる。
それに…#name#もエースに惚れている可能性が高い。前に二人で話していた時の彼女の表情は、恋焦がれる女の顔をしていた。


寄り添う二人が視界に入るなり沸々と黒い感情が湧き出てくる。苛々する。吐き気までする程胸くそ悪かった。

手に入れたい。いつからだろう?彼女が織り成す全てを自分のものにしたいと思ったのは…
しかし、掛け間違えたボタンは絶対に重なり合う事はない。
所詮俺は、強制的に弱みに付け込んで身体だけを差し出された悪人だ。
#name#の全てを手に入れるなんて…天と地が引っくり返ってもある訳が無い。
彼女と俺はこれから先、どう転んでも幸せな未来など見えやしないのだ。


そんな絶望的な未来を考えながら彼女への不遜な行為への報いがこれかと自嘲的な笑いが出た。
自業自得だと手を引くか…

それでもやるせない気持ちはどうにもならず、今日はこのまま帰るかとらしくない溜め息を吐きながら家路へと向かう。

自室に入るなり雪崩れ込むようにベットに埋もれ視界を遮断した。
しかしどんなに消し去っても瞼に焼き付いて消えない二人の光景、そして#name#の顔。

鎖で繋ぐしか彼女を繋ぎ止めて置けない状態の俺は無様としか言いようが無い。
せめて彼女との始まりさえ違っていたなら…


「…どうしようもねぇよい」


思わず漏れた本音。
ならどうする?彼女を解放してやるか?
それともこの報われない恋をし続けるか?

…恋?あぁ…俺は#name#に恋をしているのか…。想いを形にするまで気付かなかった。
真剣に恋愛なんてするのは初めてだ。まさか初めての経験がこんな形だなんて俺はよっぽどついてないみたいだねい。

そんな自己憐憫な気持ちが浮かんだ瞬間、無性にバカらしくなった。それにだ。これ以上無様な自分を見たくない。
想いを告げて振られるのも御免だが、なによりこんな俺らしくない自分が嫌いだ。

そんな自己防衛な考えばかりで、ちっとも先が見えない彼女との関係に想い耽っていると、毎度の如くサッチの野郎が遠慮も無く扉を開け入ってくる。

「なんだよ、やっぱりサボってたのかよ?」

「…なんだよい」

「かぁー、萎れた顔しやがって。何かあったのか?」

「…いや」

「へぇー。じゃぁよ、気晴らしついでにちょっと付き合えや?」

「…」


そうして乗り気じゃない俺を半ば引きずる様に、#name#と出逢う前まではよく通っていたクラブへと連れていかれた。

以前は何も感じず寧ろ居心地が良いとさえ思っていた空間も、今の俺には何もかもが不快な気持ちにさせる要因になっていた。
陽の光を遮断した箱、厚化粧の香水臭い女共。息をするのも煩わしい程だ。

そんな不機嫌極まりない俺にやたら肌を露出させた軽そうな女が擦りよってきた。
胸を押し付け腕を絡ませてくる女を冷めた目で見下ろしながら、そう言えば#name#と出逢って他の女を抱いていないと気付く。

もしかしたら少しは気が紛れるかもしれない。あわよくば#name#を想う気持ちも消し去れるかもしれない。そんな考えが頭を過った。

ならば試してみるかと、すぐさま女を引き連れ外へ出た。
近場のホテルへ足を向け部屋に入るなり絡み付いてくる女の匂いに思わず眉間に皺が寄る。
#name#と違う匂いに一気に嫌悪感が込み上げたのだ。

そんな女を鬱陶しそうに引き剥がし風呂に入ってこいと押しやってから、皺一つないベッドに腰掛けた。

やはりダメだ。#name#以外の女を抱く気になんてなれねぇ。
このまま帰るかと思い立った矢先、ポケットに突っ込んでいた携帯が震えだす。

兄弟の誰かだろうと気だるそうにそれに目を向けた俺は、予想外の相手に心臓が飛び跳ねた。

「#name#…?」

彼女から電話が来るなんて初めてだ。何かあったのか?いや…そうならば俺じゃなくエースにでも掛けるか。
そんな疑問を抱え若干嫌な予感が過りながら通話ボタンに手を伸ばせば、緊張しているのか、しどろもどろに言葉を濁す彼女に俺も口籠る。
そうして意を決した様に#name#が言葉を繋ごうとした瞬間、本日二度目のタイミングの悪さに遭遇した俺は盛大に舌打ちをした。

そしてプツリと切れた電話。何故切る?その時はそんな疑問しか浮かばなかったが、よく考えれば俺が女と居る事に、なにかしら気まずい気持ちになったのか?それとも…嫉妬か?

そんな訳はないと思いながらも、気付けば呼び止める女を払い退け外に飛び出していた。

#name#に逢いたい。
その一心で飛ばした車は何度も事故りそうになりながらも彼女の下へと近付いていく。

会ってどうする?何を話す?さっきの女の誤解でも解くか?そんなもん望んでいないだろうが、この焦りさえ感じる気持ちは抑えられそうにない。

#name#…。やはりお前じゃなきゃダメみてぇだ。代わりなんて利かねぇ。
悪ぃがどんなに嫌がろうが泣き叫ぼうが、お前を手離せそうにねぇよい。

そんな独裁的な俺は、もう時期逢えるだろう彼女の事を想いながら、ライトに照される斜面に目を細目ながら呟いた。


「覚悟しとけよい。#name#。」

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