鬼畜な彼の愛し方
| ナノ
欲×理性
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マルコ先輩のキスは、私の頭の中を空っぽにさせてしまう。つま先から頭の天辺まで痺れる様に身体が熱くなっていくのがわかる。
理由なんて分からない。ただ、目の前で私を優しく抱き締めながら唇を重ねている彼を…もっと感じたいと、そんな欲に駆り立てられる私はどうかしてしまったのだろうか?
「んっ…」
「どういう…風の吹き回しかねい?ん?」
「ぁっ…っ…」
「ククッ。なぁ…#name#?」
「んっ…」
「今日…このままさぼっちまうかい?」
「ん…ぇ?」
「なんだい?」
「……っ」
「よし、行こうかねい」
「っ…ぇ、あの…」
乱れた服を直してくれながらこのまま帰ろうと言い出す彼に驚きの表情を見せながらも、途中で寸止めされた体はまだ熱を帯びていて…
「…ん?どうした?」
「…っ」
服を整え終え、頭から下に撫でるように手を滑らせながらいつまでも膝から下りない私を不思議そうに眺める彼に、もどかしさからシャツを少し強めに握った。
「…どうした?」
「……だって」
「ん?……あぁ…ククッ。なんだい?足りなかったかい?」
「っ!ぃぇ…」
「フッ…今日の#name#は可愛いねい」
「っっ…」
「どうする?続き…するかい?」
「っ…」
私の耳たぶを触りながら続きを促してくる彼に、理性とは裏腹に本能が快楽を求め始める。
しかし私は消えつつある理性を引っ張り出し首を横に振った。
「なんだい…しなくていいのかよい?」
「いいです」
「…へぇ」
自分から求めるなんてもっての他だ。私は本当にどうしてしまったのだろう…疼く身体に疑問と羞恥心が沸き起こる。
「じゃ…いこうか?」
「…はい」
少し微笑を纏った顔でそう告げる彼に、戸惑いがちな態度で返事をした。
もやりとした胸中もそうだが、これから何処へ連れていかれるのか、そんな不安も頭を過る。
既に授業が始まっている校内はしんと静まり返り、私達の足音だけがやけに耳に入ってきた。
そんな一歩前を歩くマルコ先輩の背中を見つめながら、再びもやりとした感情が甦る。
もし、もし彼の事を好きになってしまったらどうなるのだろう?
私に興味があるだろう今なら、嫌な顔されずに付き合ってくれるかもしれない。
でも彼はあくまで身体が目当てだ。好きだのと言う余計な感情をぶつけられてもきっと迷惑だろう。
それに…失礼だけどマルコ先輩には純粋な恋愛なんて似合わない。
彼を求めてしまうのは、快楽への欲なのか…それとも…
いつまで経っても晴れない心で彼の背中を追い、後少しで校内から出るという所で私達を呼び止める声にピタリと足が止まった。
「#name#…とマルコ…二人揃って何してんだよ?」
「チッ……」
「エース…先輩」
なんとも悪いタイミングで遭遇した彼は、舌打ちをするマルコ先輩と動揺する私を怪訝そうな表情で見据えながらその距離を縮めてくる。
「なに…してんだよ?」
「あー、そこの廊下でよい、具合悪そうにしゃがみこんでたんで保健室に連れていく途中だよい」
「具合?#name#大丈夫か?」
「は、はい…」
何食わぬ顔で平然と嘘を付くマルコ先輩の言葉を、純粋無垢な彼は疑う事なくその言葉を鵜呑みにし、心配した面持ちで私に駆け寄ってくる。
「俺が連れていくよ。ありがとな、マルコ。#name#歩けるか?」
「ぁ…」
「じゃぁ…頼んだよい」
「ぇ…?」
「おう!行くぞ#name#?」
私の動揺を汲み取る事無く肩を抱き歩き出す彼を気にしながら、ちらりとマルコ先輩に振り返った。
でも彼は名残惜しさの欠片も見せず、もう既に背を向け歩き出している。
やけに淡白で潔いその行動に不信感と少し寂しい気持ちになりながらも、ここでエース先輩ではなくマルコ先輩と保健室に向かうのもおかしな話だなと、仮病の私に心底心配した声色で話し掛けてくる彼の声など上の空に、もやもやとした心と身体でそんな事を考えていたのだった。