鬼畜な彼の愛し方 | ナノ
嗜虐×困惑
ローにまで身体を許してしまった事にかなり悔恨の情にかられてしまった私は、憂鬱を通り越してもう自嘲の笑いすら出てこない。
そんな不のオーラを纏ったまま学校に足を向ければ、追い討ちをかける様に爽やかな笑顔と共に名を呼ばれ、その姿を捉えた私はまたもや頭を悩ます出来事に遭遇する。
「#name#!」
「…お、おはよう御座います…エース先輩」
「おう!なんか久し振りな気がするな」
「そ、そうですね…はは」
「ん?なんか顔色悪くねぇか?どれ」
「っ…だ、大丈夫ですよ。」
「そうか。ならいいんだ。あんまり無理すんなよ?」
「はい…」
「じゃぁ…な、また」
「っ!!」
去り際におでこに唇を落とされ、思わず一歩後ずさってしまった。
以前では考えられない行動だが、やはり身体を交えた後ではこうも接し方が変わってくるのかと少し動揺してしまう。
しかし、エース先輩の笑顔をまともに見れない自分が居た。その笑顔が眩し過ぎて罪悪感で胸が締め付けられる。純粋無垢。その言葉がぴったりな彼には私は相応しくない気がしてならない。
でも早めにどうにかしなければ、彼に対しても失礼だし、そして何より自分の首を絞める事になる。
そんな事を考えていると背後から突き刺さる様な視線を感じ、恐る恐る振り返えるとそこには…
「マ…マルコ先…輩」
こちらをまっすぐ見据えるその眼差しは、背筋がぞくりと凍るほど鋭く注がれていて、そんな視線を逸らす事無く、壁に寄り掛かり組んでいた腕を解くと人差し指だけで此方に来いと合図をする彼。
恐らくエース先輩とのやり取りを見ていたのだろう。嫌な予感しかしないが行かない訳にはいかず、おどおどと彼の元へと足を踏み出した。
「楽しそうだったねい…こっち来いよい」
「っ…はい」
案の定ご立腹な態度のマルコ先輩は、私の腕をぐいぐいと引きながら人気の無い教室へと踏み入れガシャリと鍵を掛けた。
「っ…先輩…もうすぐ授業が…」
「こっち来い」
「…っ」
間髪入れず私の言葉を遮断した彼は、長椅子にドシリと腰を下ろし膝に座れと促してきた。
その有無を言わせぬ彼の雰囲気に圧倒された私は言われるがまま近づき彼に跨る。
「ククッ、いい子じゃねぇかい」
「…っ」
「…で?エースとは…ここにキスする程の仲なのかい?」
「っ…前から…仲はいいです」
「へぇ…それは知らなかったよい」
「んっ…ダメですよ…マルコ先輩…」
「黙ってろい」
明らかに私の言葉を信用していない彼は、妖笑の笑みと共にリボンを解きブラウスのボタンを外していく。
そんな様子を捉えながら、これから行われる行為が予想できぞくりと身体が強張った。
私はまた心も通っていない人に抱かれるのか。
愛し合う者同士が身体を交える。そんな当初の考えは彼の所為で覆された。
彼の手がブラのホックを外しその少し厚めの唇が胸の先端に近づいていくのを見下ろしながら、私は間違いなく彼の所為で変わった性癖となるに違いないと感じた。
そんな私の心中などお構いなしに、愛しそうに片手でやわやわと感触を確かめる様に胸を揉みながら舌を這わせる彼は所詮私の身体が目当てだ。
そもそも彼だって女には困っていない筈だろうに、何も彼の言う名器だという事柄があるにしても、こんなに私に執着する理由はないのではないかと思う。
結局お気に入りの玩具を手に入れた子供が、今現在夢中になっているのだけであって、時が経てば遊び過ぎて飽きてしまうのだろう。そして私は用無しだ。
この期間限定の関係を私はどう割り切って過せばいいのだろうか?そんな事を考えていると、もやりと霧が掛かった様に胸の奥がざわついた。
「なぁ…#name#?まさか…この間抱かれたってのは…エースじゃないだろうねい?」
「っ……だったら…どうなんですか?」
「……。そうだねい…エースの前で犯す」
「っっ!!」
「くくっ…そんな顔すんじゃねぇよい。しなきゃいい事だろい?」
「っ…」
「#name#は…俺だけを見てりゃいいんだよい」
「………」
何も言葉が出てこなかった。俺だけを見てりゃいい?そんな事をしていたら…あなたが飽きてしまった時私はどうすればいいのだろうか?
この時、私は先程のもやりとした感覚の答えが見えた様な気がして…気付きたいようで気付きたくないこの感情を無理矢理胸の奥底へと押しやった。
それでも…なにか抑えられない想いが溢れだし彼から目が逸らせない。
「ん?どうした…?」
「…キス…してもいいです…か?」
「っっ!? …ククッ。いいに決まってるだろい?」
自分でも何故だかわからない。無性に彼と唇を重ねたくなった。
そんな私を少し目を見開き驚いていた彼だが、唇が触れた瞬間、腰と頭を強く引き寄せその口付けを深くしていく。
益々深くなっていくマルコ先輩の口付けを受け止めながら、この行動が後に後悔に繋がろうとも、どんなに傷付く結果になろうとも、そんな事はもうどうでもよくなってきている自分がいて、少しの動揺と少しの期待を胸に抱きその彼の広い背中に腕を絡ませたのだった。