君の光と僕の影 | ナノ

#03 驚光



マルコとの馴れ初めはありきたりだった。

休みを翌日に控えた仕事帰り、少し苛ついていた気持ちの憂さ晴らしでもしようと、飲む気満々で立ち寄った店で偶然居合わせた同級生。その連れがマルコだ。

そして酔い潰れた私を介抱してくれたのがきっかけ。それから意外と気の合った私達は一線を越えるのも付き合い出すのも早かった。

初めはただ顔が好みだな、とくらいしか思っていなかったが、三つ上の彼は歳上らしく落ち着いた雰囲気や振る舞い、そしてふとした時に見せる笑顔に堪らなく惹かれていく自分がいた。

しかしそれも、今まで付き合ってきた相手に比べれば頭一個分飛び出てるくらいで、さして特別意識はなくまさか結婚まで持ち込むとは思ってもいなかった。

そうして順調に付き合いを進める中、いつも私の家か外でしか会わない彼に不信感が募り出す。

聞けば弟と二人で住んでると言うが、家に行きたいと告げれば言葉を濁す彼によからぬ思考が頭を過りだした。

まさか妻子持ち?でなくても彼女と同棲?ごみ屋敷はさすがにないだろうと、そんな事を思い浮かべながらある日しつこいくらいに食い付けば、渋々了承してくれた彼にホッとしたのを覚えている。

しかしかなり念を押され愛想の悪い弟がいると言われた事に、そのくらいで、と高をくくっていた自分をもう一度改めさせたい。

そうして初めて恋人であるマルコの家にお邪魔した日、小綺麗にされた3LDKのマンションにごみ屋敷が消えたと胸を撫で下ろす一方、双子と言う弟に若干の期待と好奇心が疼き出す。

もうすぐ帰るだろうと未だ浮かない顔の彼を横目に、そんなに弟に会わせたくなかったのかと、合間合間に溜息を吐くマルコを見ながら益々期待度が上がるのは、仕方がない。

だって愛する彼と瓜二つの顔が拝めるなんて、そうそうあったものじゃない。


「お、帰ってきたみたいだよい」

「ほんと?なんかドキドキする」

「…、あ、クロ。この前話した#name#だよい」

「初めまして#name#です」

「ブスだねい」

「…は?」

「クロてめぇいい加減」

「マルコの趣味はいつも悪ぃな」

「おい!ふざけ…はぁ、#name#。見ての通りあんなんなんだい、すまねぇ」

「……う、うん」

そうして初対面に高鳴る私とは裏腹に、目が合った瞬間ゾクリと背筋が凍る威圧的な眼差しと共に吐き出された悪態に当然ながら唖然となる。

そんな私に、協調性がないだの気にするななどとこの展開を予想できていたのだろうマルコがぶつぶつと言っていたが、その時の私は少しずつ歩み寄れば、なんて軽い気持ちを抱いていた。

それから暇さえあれば彼の家に赴き食事を作ったりなんだりと、クロとの接点を少しでも深めようと私なりに努力した。

しかし相変わらず変わらぬ態度のクロに、私はめげる処か沸々と敵対心のようなものが沸き上がる。

そんな生活を初めて二週間程経った何時もより大分遅くなった仕事帰り、気だるい体で自宅に戻ればエントランスの手前に見慣れたシルエットが目に入った。

「マル…クロくん?何してるの?」

「…あぁ、遅かったねい」

「え、うん、まさか…待ってたの?」

「あぁ。少しいいかい?」

「うん、あ、上がって?寒かったでしょ?」

「……」

予想外過ぎるこの状況に驚きはしたが、わざわざ待っていたと言うクロにやっと心を開きだしたのかと嬉しくなった。

そんな心境の私だ。何の疑いも戸惑いもなく部屋へと招き入れる。

もう時期日付も変わる時間だったが、クロが来ているのにマルコに報告しない訳にはいかないと携帯を取り出した瞬間、パシリと携帯ごと手を叩かれソファーに押し倒された。

状況を飲み込めず驚きの眼差しを向ければ、食い込む程強く手首を握ったまま見下ろすクロの視線は、とても冷たい怒りの光を放っていた。

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