君の光と僕の影 | ナノ
#31 解影
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「なぁ、クロー。」
「…駄目だ。飯は仕事が終わってからだろい、エース。我慢しろよい」
「ちぇーっ。」
運転中にも関わらず一向に頭を弁当から切り離さねえエースを助手席のシートという至近距離から睨みつけてピシャリと言い放つ。
その言葉を受けて、口を尖らせながら運転に意識を戻したエースに判らないよう口元を緩めて笑った。
「そんなに長くはかかりゃしねぇよい。大方、見積もりと日程の調整だろう。」
宥めるように言えば、あからさまに溜め息が返事として返ってくる。子供のようなエースのこういった部分が、俺にコイツを受け入れさせた一番の理由だなといつも思う。それと、馬鹿の一つ覚えみてぇにやたらと仕事だけはキッチリやる所もだ。
「なぁー、クロ?」
ギアを切り替えながら、ついでのようにエースが俺を呼んだ。
「なんだい。」
「#name#と、やっぱ付き合うのか?」
「なっ…」
目を見開いて眺めたエースの口元が、生意気に弧を描く。…思い出したよい。コイツ妙な勘だけは鋭かった。
「…さぁなぁ?どう転ぶか俺にも解りゃしねぇよい。に、しても目敏いヤツだよいお前は。…いつ気付いた?」
嘘を吐くのは違うと思った。
誤魔化して一体何になるのかと、そう感じた。根拠なんかねぇが多分、誰に何と言われようが止める事は出来ねぇと自覚があってエースとサッチには、それこそ隠す様な真似をするのは自分が間違っていると言ってるようなもんだと思ったからだ。
「んー…?よく、わかんねぇけど。クロが変だからな。あと、#name#からクロの匂いがしたんだよ。だからそうかなと思った。」
「ハッ、御明察じゃねぇかい。…雪でも降るかもしれねぇなぁ。」
「なんだ?ゴメイサツって?…とにかくな?俺は別に反対とかしねぇよ。マルコが何て言うか知らねえけど、仕方ねぇもんな。」
馬鹿の言葉の威力ってぇのは、たまにスゲェなと感心するよい。
…嬉しいなんて、柄でもねぇか。
「あぁ。ありがとよい、お前らに心配かけるようにはならねぇ。…マルコも知ってんだい。」
「えっ?!!まじかよ!!」
「あぁ、よい。…笑ってた。」
「そ…か…。」
「ホラ、時期に仕事場だ。さっさと済ませて飯食って帰るぞ。」
改めて見たエースはやはり少し笑って。
腹が減ったのを思い出したのか、急にやる気を見せた。
「うぉし!!チャッチャとやろうぜ!#name#の弁当が待ってんだからなっ!!」
――――――
―――――――
「はーい、こちらサッチ。」
「サッチ、やっぱ台数が多くてよい。帰るの8時過ぎちまう。すまねぇが、適当な所で店締めて#name#送っといてくれねぇかい。」
「おー、そうか。了解よ。じゃあ帰りにお茶でもご馳走になるかなー。」
「……サッチ、」
「ジョーダンだっての!!んな怒んな。送って入り口で帰るに決まってんだろ!人のモンに手はださねぇって。」
軽口をたたくサッチに少しイラつきながら時間が惜しくて通話を切った。
サッサと仕事を片付けて帰りたい。
#name#とサッチが二人きりだというだけでも胸くその悪い俺は、自分でもどうかしてると思いはするが仕方ねぇんだ。
「クロぉー。」
「あー、よい!あと一時間やったら飯食って来い。ったく、うるせぇ。」
一時間もすれば、#name#が家に帰ってるだろう。サッチを信じてねえ訳じゃあねぇが、念のため電話をしようと算段をしながら頭を仕事に切り替えた。
思いの外キッチリ。本気を出したエースのお陰か、一時間で一段落つき休憩を入れる。嬉しそうに車内で飯を食うエースを眺めながら、煙草をくわえ車外で携帯を鳴らす
「あれ?#name#ちゃん、ケータイ鳴ってねぇ?」
「あ、本当だ。…ふふっ、クロだ!」
「アイツ、俺を疑ってんね!クッソー。」
「…おかえり、#name#。」
「っっ!?」
「あれぇ?お前何やってんの?」
「電話、出ねえのかい?#name#。」
「…マルコ…。」
俺は知る由も無かった。
何で#name#が俺からの電話を
直ぐに取らなかったのか、なんて。
マルコが、1日切り上げて帰ってるなんて