君の光と僕の影 | ナノ

#30 解光



「…へぇー、やっぱそうかぁー。」


おかずを口に放り込んだ流れで、口に箸を加えたままサッチさんはウンウンと頷いた。
案外と呆気なく。



「驚かない、ですか?」


「ん?何で?」


「や、だって…」


フッと鼻先が微かに笑ってサッチさんの目が和らいだ。
まるで、本当にお兄さんみたいだなーなんて呑気な事を思ってしまう。


「気にしてんの?…ソレが正しいかどうかとか、そーいう事。」


「…してないと言えば嘘になりますね…。」


どこかで不安、なんだ。
端から見れば異常かもしれないって。
それは、マルコにもクロにもすごく失礼な事なのにどうしても胸の一部が霞がかる。そして、それがいつか胸の内全体に広がってしまわないかと怯えている。



…ちゃんと、始まってすらないのに。



「フーン。…まっ、とりあえず食わねぇ?片付けてからゆっくり話そ。」


「…うん。」



誰かが傍に居る時は平気なのに、独りになると駄目。マルコの想いとか、クロの顔とか、自分は一体どうしたいんだろう?とか溢れてしまって泣きそうになる。
正直に言えば、明日、マルコが帰ってくるのがコワい。
どうなっちゃうんだろって。



「…なぁ、#name#ちゃん?」


「ぇ?…ぁ、ハイっ。」


「ちょっとコッチ。立って?」


タンタンと指先で机を叩いて、サッチさんが自分の隣を指してウィンクした。
食べる気の湧かないお弁当の上に箸を置いて言われるがまま、サッチさんの前に移動して立ち尽くす。


ガタッと音をたててサッチさんが腰を上げ私を見下ろした。



「っ?!」


「なぁ…キスしてみよっか?」



突然掴まれた両手首を引き上げられて、そのまま雪崩込むように壁際へ押し付けられる。鼻先が触れる程近く、顔を寄せてサッチさんが笑ってそう言った。



「や、だっ…サッチ、さ…やめっ」



「だーめ。」



何が起きているか解らず、手首がひたすらに痛くて、サッチさんは笑っている。
本当にキスされるかもしれないと思った途端に、目から涙が零れ落ちた。



「やだっ…」



「…だよな?」



「ぇ…?」



引き寄せられた身体が、スッポリとサッチさんの腕の中に包まれて、ギュッと抱き締められた。ポンポンとリズムを以て大きな掌が私の背を宥めるように優しく叩く。



「…誰でもってワケじゃねぇのよ、#name#ちゃん?それが、好きって事じゃねぇの?」



見上げたサッチさんが優しく笑って、またウィンクをくれた。



「惚れたんだ。#name#ちゃんはあいつ等2人にさ。どっちもちゃんと。お兄さんはそう思うけどな?」



また涙が零れ落ちる。
止めようもなく、ポタポタ。



「ごめんな?怖かったろ。…あんま、悩むなよ。誰が非難しようが、俺は#name#ちゃんの味方よ?んで、あいつ等の大親友。」




――――なるように、なるさ。




そう言ってサッチさんは当然のように私を励ましてくれた。




それが、嬉しくて
私はサッチさんの胸を借りて
暫く泣いた。



私が、ブレちゃいけない。
マルコとクロの間で、
もう、迷わないと決めた。




最大の味方が居てくれるんだからって。

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